コント師の日本一決定戦、キングオブコント2019はご承知の通りどぶろっくが優勝をもぎ取った。伝説のコント55号(萩本欽一、坂上二郎)を輩出した浅井企画から初の王者である。
ネットニュースでどぶろっくの勝利という結果に驚かされてから、後追いの動画で大会のもようを視聴した。あわせて、私なりに各ファイナリストのネタをせんえつながら採点してみた。その採点は以下の通り。
◆ファーストステージ
うるとらブギーズ 89
ネルソンズ 86
空気階段 87
ビスケットブラザーズ 91
ジャルジャル 92
どぶろっく 95
かが屋 90
GAG 88
ゾフィー 85
わらふぢなるお 84
個人的な採点の上位3組はどぶろっく、ジャルジャル、ビスケットブラザーズ(ビスブラ)。ビスブラには意表を突かれた感がある。てっきり関西人が小競り合いのケンカを始めるありがちなコント(失礼)かと思いきや、観客に2人そろって訴えかける演劇風。記憶をなくした恋人同士が再び巡り合うドラマ性や「月・火・水…」と言ったギャグもバシっと決まり、引き付けるものがあった。
9年ぶりの決勝進出となったジャルジャル。2組目のネルソンズと野球部つながりだったが、こちらもジャルジャルらしい世界観で笑いのポイントをきっちり要所要所で稼いだ。オチの「中国地方」は弱かったか。
そしてどぶろっく。彼らの代名詞たる下ネタを豪速球でぶち込んできたが、ベテランらしく洗練されていたなw
どぶろっくの代表作で知られる「女っつーのは」「もしかしてだけど」「女・女・女」などのネタと「大きなイチモツ」(書くのも恥ずかしいがw)とが違う点は「女性を巻き込まないネタ」ということ。これまでの彼らのネタは女性にあからさまな性欲をぶつけたり、また女性をこういう人間だと決めつけるマウンティングをしたりと、女性に不快感を与えるネタが主体だった。
今回の「大きなイチモツをください」も、理由が「女性をそれで…」みたいなのだったらドン引きどころか放送した自体が大問題になっただろう。それ以前に決勝に上げられなかっただろうが。
しかし農夫役の江口が「大きなイチモツ」を欲する理由を単に注目を浴びたいといったバカバカしい内容にすることで、放送できる下ネタに昇華できた。またネタの終盤で、森演じる神様が「大切なのはサイズではない、愛情が…」と江口を説得するくだりは非常に良かった。twitterのタイムラインで、女性のアカウントが「男性器が大きいと性交時に負担になる」とツイートしていたのを見かけたことがある。
つまり神様は農夫への説得で、そうした女性の思いを代弁したと言えよう。このくだりは女性の共感が大きく得られるのではないか。あのどぶろっくが…w
◆ファイナルステージ
ジャルジャル 87
うるとらブギーズ 88
どぶろっく 90
ジャルジャルは福徳の足のケガのため、急きょネタを変更したらしい。予選にかけたネタではなく、単独ライブから採用したもの。
いつだったか三村マサカズが「さまぁ~ず×さまぁ~ず」(朝日系)で「単独ライブでかけるような変化球ネタをKOCにかけてスベる組がいる。ライブと区別がつかないならやめちまえ!」と辛らつなコメントをしていたのを思い出した。このジャルジャルの空き巣ネタを見た三村は、単独コントから採用した作品とはさすがに知らなかったろうが、オチに苦言を呈していた。
うるとらブギーズは1本目の催眠術コントの設定が型破りで、見ているこちらが理解するのに時間がかかった。設定にコントの比重を置く組なのかと思っていたが、2本目はわりと普通の設定だったな。スポーツ解説者はキャラの立っている人が多いしね。1本のコントとして見れば不満の少ない手堅い内容だったが、これを優勝作品とするには弱いと感じた。
そしてどぶろっく。神様役を森から江口にチェンジするなど工夫はしたが、さすがに1本目からはインパクトもネタの質も落ちるね。それでも追撃するジャルジャル、うるブギのネタが若干弱く、個人的には「どぶろっく逃げ切りでいいな」と一番高い点数をつけた次第である。
大会全体を振り返れば、ネタのジャンルも豊富で実力の拮抗(きっこう)したいい大会だったと思う。しかし同点が多かったのはねえ。5年にわたって、5人という少数の審査員でやってきた弊害が出ているんじゃないの。
5年というのを区切りに松本人志、さまぁ~ず、バナナマンという審査員の体制を来年は見直した方がいいんでないのと私は考えています。