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藤子不二雄A先生追悼

 今晩、まあ午前0時をすぎましたけれども、今回はこの話をしないわけにはいかないでしょう。

 漫画家の藤子不二雄A(正しい記述は○の中にA)先生=本名・安孫子素雄=が死去していたことが、7日に報じられました。88歳。

 私はこれまでもちょくちょく書いてきたと思うが、子どもの頃は漫画家になりたいと願っていた。子どもの頃、つっても小学校に上がる前の保育園の年長あたりかね。幼少のみぎりに、そんな大それたことを考えたのはひとえに「藤子不二雄」の存在があったからである。

 当時は藤本弘(藤子・F・不二雄)、安孫子素雄の2人で1組だった藤子不二雄。彼らが世に送り出した「ドラえもん」「怪物くん」「忍者ハットリくん」を私は夢中になって読んだ。先の3作品のうち「怪物くん」「忍者ハットリくん」がA氏の筆によるものである。手足が伸縮自在で数を5つ数えれば無敵の怪物太郎、ポーカーフェイスで理知的、冷静な伊賀忍者服部カンゾウは魅力的な主人公だった。

 ここからはつらつらと思い出を書いていく。雑な駄文が並べられると思うが、ご容赦願いたい。

 コンビ時代の藤子不二雄は、メディアに出演する際は必ず2人で出演していた。「ケンちゃんチャコちゃん」のシリーズにも本人役で出演したことがある。

 コンビの藤子不二雄が1作品を原作・作画で分けるスタイル(今回A氏を追悼したゆでたまごが相当)でなく、それぞれが単独で描き上げた作品を発表するスタイルなのは今でこそ有名。しかし当時はどちらがどの作品を担当しているかは明言されていなかったと思う。ただ、読み手である私たちは何となく「あ、ドラえもんはベレー帽の人(F)で怪物くんやハットリくんは眼鏡の人(A)なんやな」と見当がついていた。

 それと言うのも、小学時代に購入していた小学館の学習雑誌…「ドラえもん」が必ず載っていた『小学○年生』てやつね。あれの付録の冊子に「ドラえもん」や「怪物くん」の誕生秘話、みたいな短編漫画が収録しておったのよ。確か作画は藤子のアシスタントをしていた、しのだひでお氏だったと記憶している。

 で、その漫画で「F氏が新連載の告知が出ても主人公の設定が考えつかず、締切当日の朝にドラえもんの設定を思いつく」とか「F氏と一緒にドラキュラや狼男、フランケンの出てくるホラー映画を見たA氏が『彼らを家来にする怪物王国の王子』のアイデアを出す」という経過が描かれておってね。それを読んだら小学生でも「あーなるほど。『ドラえもん』の絵柄の人がFで『怪物くん』の絵柄の人がAなわけね」と容易な区別が可能になるってもんで。まあほんと、日本漫画史において空前絶後の漫画家コンビだったのは疑いありませんわ。

 さてA氏と来れば『まんが道』だろう。私の小学時代にNHKにて竹本孝之長江健次主演でドラマ化された。同作品は、既にプロで複数連載を持っていた主人公2人が富山への帰省でだらけてしまい、連載の大半が締切に間に合わず「落として」しまうというトラウマ展開が有名である。

 ただ私にとっては、ドラマ版での、A氏が自身をモデルにした主人公・満賀道雄の漫画家デビュー前の新聞社勤務時代もかなりのトラウマシーンだった。

 若手時代のある時期、道雄は新聞のラジオ番組表の制作を任される。まだテレビが普及していない頃の話で、道雄は上司役の蟹江敬三から「ラジオ欄は一番読まれる紙面だから」と正確な作業を念押しされる。しかし道雄は片思いしている同僚のことをぼんやり考え、いい加減な番組表を作ってしまう。

 翌朝、道雄が出社すると職場では抗議電話が鳴り響いていた。もちろん、道雄が制作した番組表へのクレームである。蟹江さん演じる上司は、道雄を見かけるなり「馬鹿野郎!」と怒鳴り、電話対応に追われるのであった。

 いやー、このくだりはトラウマだったねw 蟹江さんの演じる上司は「強面だけど若手に親身」というキャラだったので、そんな人に怒鳴られた点をもって、いかに道雄が取り返しのつかないミスをしたかが視聴者に伝わるってもんでね。

 道雄はショックで辞職を考えるが、既に就職先を辞めていた相棒の才野茂の激励、また上司の温情もあって勤務を続けるという結末だった。ただもう俺はほんと、小学生にして「社会人になったら、職場に抗議電話が集中しないようにしよう」と考えたからねw 今やっている仕事もそういう状況に陥らないよう、肝に銘じている次第です。さすがに50歳手前に来て「馬鹿野郎!」と怒鳴られたくはありませんしw

 

 最後に。私は数年前、富山県へ出張した際に「ハットリくん列車」に乗ったことがある。いや最初から乗ろうとしたわけでなく偶然でなw

 「忍者ハットリくん」のカンゾウ役を演じた声優の堀絢子さん自ら車内アナウンス。途中で「この地域は藤子不二雄A先生の出身地でござる」て説明していた。そういえば、A氏の訃報を富山県では号外出したみたいね。

 いやもう、本当に惜しい。あの世でA氏とF氏が、再び合作をしてくれることを願っている。藤子不二雄A氏のご冥福をお祈りします。