◆ファーストステージ
1.わらふぢなるお
本選が始まる前、私は律義に事前の宣伝番組を見ていた。女優の松岡茉優、タレントの武井壮、そしてモデルで大会アンバサダーの池田美優(みちょぱ)がそれぞれ過去の大会で好きだったコントを挙げていたのだが、武井が挙げたのが第2回準優勝・サンドウィッチマンのハンバーガーショップコントであった。
この約30分後に決勝初進出となるわらふぢなるおが披露したのが、インターネットトラブルの相談を受け付けるサポートセンターのコントだった。これがまあ、サンドそっくりなわけよ。ツッコミ役で、このコントではサポートセンターに電話する青年役を演じる口笛なるおはグレープカンパニー所属でサンド直系の後輩(ちなみに芸名も伊達の命名)。こもった声、荒い口調でのツッコミは伊達そっくりだ。
対してサポートセンターのオペレーター役を演じるボケの藤原。こちらも無表情で淡々とボケる様は富澤と通じるものがあったが、何よりこのコントではデタラメにパソコンキーを打ち込むボケがあって「あっ…」と思わざるを得なかった。直前に放送したサンドのハンバーガーショップコントで、やはり富澤がでたらめにレジ打ちをしていたからである。正直、わらふぢなるおの2人的には武井を恨みたくなったろう。まあ事前番組を見ていない人でも「サンドぽくね?」と思われていただろうが。
コント後半はサンドそっくりなテイストからがらりと趣向を変え、顧客のなるおを藤原が監視しているかのようなサイコホラー的な展開に。ただこうした転調はうまくいった印象がない。もっと序盤に監視しているような伏線を思わせるポイントが欲しかったところだ。
審査員の松本人志、大竹一樹、三村マサカズ、日村勇紀、設楽統の合計得点は434点。
個人的な審査の採点は87点。
(決勝戦3年連続3回目、よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属)
昨年の準優勝、個人的には今大会の優勝候補本命に挙げていたトリオが早くも登場。出番が早いのも何のその、高層ビルのエレベーター前で繰り広げられるスリリングな愛憎劇を見せてくれた。
次々と明かされるカップルの秘密。それをとうとう聞き逃せず、大事な商談を捨ててエレベーターの中から見届ける斉藤と、中盤までのシナリオの盛り上がりは目を見張るものがあった。
ただ後半は失速したかな。閉まろうとするエレベーターを十分に生かし切れていないと思った。閉まりかけのエレベーターを斉藤がスライディングして足をねじ込んで止めるとか、顔を挟み込んで止めるとかそういった荒業をクライマックスで期待した自分がいたんだよね。まあこないだエレベーターの事故があったし、あまりコンプライアンス的に無茶はできなかったかもね。
審査員の合計得点は452点。
私の個人的採点は90点。全くの余談だが、ゆうべの仕事帰りにこのコントでの太田の女装にそっくりな女性を見かけたwおかっぱヘアーにグレーのスーツのクールなキャリアウーマン。
3.かまいたち
(決勝戦2年連続2回目、よしもと・クリエイティブエージェンシー所属)
ネタ前の紹介VTRで「関西のバナナマン」と言われているのには違和感を覚えた。また個人的に、かまいたちは伝説のコント「ホームルーム」をかけた昨年の大会で優勝すべきだと思っていたので、申し訳なかったが今年の彼らにはそんなに期待をかけていなかった。ファイナルステージは進むだろうが3位あたりを予想していた。優勝はジャングルポケット、準優勝はさらば青春の光とみていた。
ただ私は、ファーストステージの彼らのネタを見て己の不明を大いに恥じることになる。ネタの完成度なら、過去のキングの作品とも全く見劣りがしないものがあった。今大会に限れば、出場した2477組の中でも最も面白いコントだったと今は断言できる。
舞台は公園。さえない学生の山内が、クラスのマドンナに告白される…という練習を行っているのを同じクラスの濱家が目撃するという導入。マドンナ吉田さんをベンチに座らせようと山内がなぜかコテコテの関西弁を使うのを採用するところも十分面白かったが、ここからコントは怒涛の展開を見せる。
さえないキャラのはずの山内が「般若の山内」という凶暴な本性を見せ、植え込みに隠れていた濱家とのスリリングなやりとりを展開する。いやあ、ドリフのコントを思い出しましたわ。「もう見えてんだよ!」と追い込みをかける山内、半泣きで動けなくなっている濱家。このくだりはドリフターズの加藤茶と志村けんでやっても違和感なかったよ。素晴らしい。
審査員の合計得点は464点。暫定トップ。
個人的な採点は92点。まだ序盤だったのでわれながら抑えた感じはある。このネタがファーストステージラストなら95~96点はつけたかもしれない。
続きます。