無料カウンター

勝手に芸人を表彰!ENGEI SHAMROCK AWORD2017

 昨年に続き、私「ENGEI SHAMROCK」ブログ管理人のマサトヰシグロシャムロックが勝手に今年のお笑い芸人のMVPと新人王と特別賞 を決める「ENGEI SHAMROCK AWARD」をやります。

 今回は前述の三賞とともに功労賞を設けました。

 さて昨年はMVPにハリウッドザコシショウ、新人王にカズレーザーメイプル超合金)、特別賞にBOOMERを選びましたが、今年はどの組が勝手に表彰されるのか?

 受賞結果は以下の通りです。

MVP 友寄隆英(通称ナスD、朝日系「陸海空地球征服するなんて」ディレクター)

新人王 アイデンティティ

    ペンギンズ

特別賞 空想大河ドラマ「小田信夫」(NHKテレビ)

功労賞 小松政夫

 MVPは、いろいろ選考を悩んだ末に12月29日放送の「無人島生活」スペシャルでも猛威を奮った「ナスD」ことテレビ朝日社員の友寄氏に送ることに決めました。「芸人じゃねえじゃん」というツッコミが聞こえてきそうですが、とにかく「陸海空こんな時間に地球征服するなんて」(深夜時代の番組名)でのアマゾンロケは、論より証拠の最たるものでしょう。私も、彼が現地で刺青の原料に使われる果物の汁を顔と全身にくまなく塗りたくってしまい、一夜で青黒くなった映像を見て、最初はドン引きしましたよ、ええ。

 ただその後もさして後悔する顔を見せず、アマゾンの酒屋ではアルコール度数50度はある地酒をまるでジュースのように飲み干す。それまで3日ほど不眠不休が続いていたおかげでアマゾン川渡航中に倒れるも、4日間の眠りから覚めてアマゾン川をまともに見られなかったのを子どものように悔しがる…そんなナスDの姿を見て、私も何か心を打たれるものがありました。

 「無人島生活」スペシャルの前日深夜に放送された特番では、よゐこ濱口がナスDとの因縁を語っていました。今はなき「いきなり黄金伝説」で、濱口と数々のロケをともにし、彼に無人島生活でのモリ突きを教えたのもナスDだったといいます。今回の無人島対決は、いわゆる格闘漫画でいう「師匠と弟子の対決」だったわけです。結局、対決は「師匠」の圧勝でしたが。

 よく俳優やミュージシャンをさして「芸人顔負けの○○」と語られる人はよくいますが、ナスDはそのラインとはダントツにレベルが違う、まさに「芸人キラー」と言えましょう。現在、テレビをつければどこにでも出てくる「芸人飽和状態」のショービジネス界において、ナスDはジョーカーのような存在感を放っています。

 7年前に、ナスDはとあるインタビューに応えています。

 記事はこちら。

www.oricon.co.jp

オリコンニュースから)

 インタビューで目を引いたのは「番組の視聴率が取れなくても、出演者に『もう一度あの人とやりたい』と思われればよし」という趣旨の発言です。もちろん視聴率を初めから取らなくていいと思っているわけではないですが、現在のテレビ業界で必要悪のように言われている「視聴率至上主義」や「旬のタレント消費」を乗り越えようとする姿勢に共感を覚えました。

 しかし昨今のテレビ界、顔も名前も有名なバラエティー番組のプロデューサーが増えました。同じテレ朝の加地倫三、TBSの藤井健太郎テレビ東京の佐久間宣行…。ナスDのような、凄腕のディレクター、プロデューサーがまだテレビ界には潜んでいたことに驚きました。来年は1月早々に「陸海空」でナスDメインのスペシャルが放送されます。彼のさらなる飛翔を期待して、ここにMVPを送ります。

 

 新人王は、まあMVPが芸人じゃないからというわけでもないのですが、2組選びました。ただこの2組も、今となっては説明は不要と言えましょう。

 野沢雅子ものまねでブレイクしたアイデンティティ、兄貴と舎弟のキャラ漫才で頭角を現したペンギンズ。どちらも今はなき朝日系「お願い!マンピンコン」で月間優勝を果たした共通点があります。爆笑問題のロケ番組「住んでみた」(朝日系)でもエース級として出演し、ロケ芸人としても定着しつつ彼らに新人王を送ります。

 

 特別賞は、芸人ではなくテレビ番組に。ネプチューン主演、そしてこのほど芥川賞候補にも選ばれた前田司郎氏脚本の「小田信夫」に送ることにしました。

 「小田信夫」は拙ブログでもレビューを書きましたが、とにかく初回の「城内の廊下グルグル」は見る者の度肝を抜きました。小田信夫を演じる堀内健の小気味いい演技も光りました。

 「小田信夫」は来年正月に再放送されるとのことで、新シリーズへの期待も高まります。ぜひとも前田氏に芥川賞を受賞してもらって、新作への弾みをつけてもらえたらと願います。

 

 そして今回新たに設けた功労賞は、日本が誇るギャグ芸人であり、喜劇人協会会長でもある小松政夫さんに送ることにしました。

 師匠である故・植木等との師弟愛を描いた著書を原作としたドラマ「植木等とのぼせもん」(NHKテレビ)が放送されたのは、記憶に新しいところです。あわせて、小松さんはインタビュー出演した日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」日曜版にて、自身が赤旗日曜版の読者であることを告白しました。齢75にして、芸人の気骨を見せる小松さんに、せんえつながら功労賞を送ります。

 

 今年も残すところあと四十数時間。早いもんですが、庶民の娯楽たるお笑いが2018年もとどこおりなく楽しめる世の中にしたいと思います。

 それでは皆さん、よいお年を。

M-1グランプリ2017決勝戦の感想その5

◆最終決戦

 この最終決戦が始まる前に、番組は長めのVTRを放送していた。内容は「ファーストラウンド1位の組が勝つとは限らない」という趣旨で、2008年のNON STYLE優勝の過去映像などを流していた。これがそのまま最終審査の結果に直結したとは思わないが、何か引っかかるものを感じた。

 

1組目

とろサーモン

 審査員の博多大吉が後の投票の動機に挙げた「こちらこそ」のファーストボケから、順調に笑いを生み出していった。個人的には本編前の肩がぶつかったくだりがすげえウケたが、本編の石焼きいもネタに入ってからも「すいもせん」などの久保田のとぼけたボケがクリーンヒットしていた。

 ただ久保田が教祖を演じてからのくだりが正直もったいない気がした。意図的に見る側を置き去りにするタイプのギャグだとは分かるが、賞レースの最終盤でやるのは結構リスキーだなと思った。リアルタイムで見たとき、私はあまり教祖のくだりは笑えなかったが、録画を見返すと観客は結構ウケているんだな。

 個人的な採点は90点。

 

2組目

ミキ

 スター・ウォーズのネタ。「インディ・ジョーンズ」主題歌のイントロを兄の昂生があからさまに「暴れん坊将軍」でやっているのは少々強引に思えたが、弟・亜生の誘導で翻弄される昂生の姿がファースト以上に滑稽に映し出された。

 ハイライトは光GENJIのくだり。昂生が光GENJIの名称をマジで間違えたのかネタなのか分からない感じで切れるとか、「パラダイス銀河」での昂生のスケーティングとか緊張感を忘れて楽しめた。ネタの時間が少し短かった気がする。

 個人的な採点は92点。

 

3組目

和牛

 旅館のネタ…ということで、とろサーモンの1本目と被っていたし、前半はかつての和牛のメインネタに見られた水田のモラハラキャラが前面に押し出されて、こちらとしてはファースト同様「大丈夫か?」との思いにとらわれた。

 しかし川西の研鑽(けんさん)のたまものであろうか、彼の演じる仲居のキャラが抜群に立っていた。水田の嫌味をカメムシに込めて投げ飛ばすくだりで一気にネタを軌道に乗せたように思えた。宿泊2日目の仲居のリベンジには私も手に汗握って応援したものである。←若干ウソ

 ただリアルタイムで見たときは「絶対和牛の優勝」と思っていたのだが、録画を見返すと後半の仲居のリベンジがやや物足りなく見えた。大会後にネットで話題になったが、和牛のこのネタは4分50秒ほどあったらしい。当然、大会規定とされている4分はとうにオーバーしている。宿泊1日目までの時間をかけすぎたように見える。拍手笑いが終わるのを待っているのも2カ所あった。そういう点が、私のような素人から見れば圧倒的に見えた和牛の2本目も、プロの審査員は違うものを見させたのかもしれない。

 個人的な採点は97点。これはリアルタイムで見たときの点数。見返すと、うーん、93点かな。

 

◆投票結果

とろサーモン 4票

ミキ     0票

和牛     3票

 

 とろサーモンがラストイヤー、初出場の決勝というチャンスをものにして日本一の栄冠を得た。リアルタイムで見たときは、和牛の優勝でないことには納得しかねるものがあったが、録画を見返すと審査員の春風亭小朝かまいたちに語った「勝ち切るネタ」が2本目でできていなかったのかなとも思う。聞けば和牛は予選初戦から決勝の最終決戦まで、すべて違うネタをかけるという試みをしたという。良ネタをいくつもそろえるポテンシャルに驚嘆するも、コンビで「これだ」と思える勝負ネタを作り切れなかったのかなという気もした。

 とにかく、遅れましたが、とろサーモンのお2人は優勝おめでとうございます。

THE W決勝戦の感想その5

◆最終決戦

 残った5組が勝ち上がりの早い順から2本目のネタを披露。全組のネタ終了後、401人の審査員が1組に投票して優勝者を決める。このシステムはアラがあるなあ。出番が早い方が不利になるし、ネタとネタの間にCMいちいちはさむので、やけに時間が長い。私は録画でCMをスキップできたが、生で見ると結構ダレがあったろうな。

 

1組目

ニッチェ

 ハートフルショートコントと銘打った一作。この手の賞レースでショートコントを集めるネタをやるのは、かなりチャレンジングではある。私の記憶では「爆笑オンエアバトル」のチャンピオン大会セミファイナルでアンジャッシュがやったな。「アンジャッシュドラマ」と銘打ったやつ。

 懸命に生きるシングルマザーの江上に娘の近藤がひねりのあるエールを送り、江上が顔芸をやるという力業を見せる。舞台が家の中に限定されていたので、三者面談の設定で学校とか、娘がいなくなって母親が町中を奔走するとかいろいろなシチュエーションで見せてくれた方が顔芸もワンパターンぽくならなかったように素人考えをした次第だ。

 最後は親子泣きながらのにらめっこで舞台が暗転し、終わりのドラの効果音が鳴るのだが、なぜかドラが鳴った途端に近藤が「アップップ」を中途半端にやめていたので気になった。別に続けても問題なかったが、「ドラが鳴ったらネタは強制終了」というルールでもあったのだろうか。

 個人的な採点は88点。

 

2組目

アジアン

 2人そろってのテレビ出演は約3年ぶりも、本日2本目とあって固さはファーストより取れ、のびのびと馬場園がボケていたのが印象に残った。「♪おとなの人~」のメロディーラインは不気味ながら耳に残るキャッチーさがあり、繰り返しでラッパーのようなフェイクを足すなどアジアンらしい悪ノリ感が心地いい、減点の少ない安定感のある漫才だったと思う。

 ただ思い返してみれば、M-1で春風亭小朝かまいたちに語っていたような「勝ち切るネタ」だったかというと疑問が残る。

 個人的な採点は93点。

 

3組目

牧野ステテコ

 ネタ後に審査員のヒロミが「まさかまたポールを持って来るとは…」と言っていたが、私としては「やるならポールネタしかないだろう」と思っていた。中村涼子との接戦を制して勢いのあるネタだし、2本目なら予備知識のできた観衆もより受け入れやすくなっていただろうから。

 果たして、2本目のポールダンスネタは1本目よりも予想以上に良かった。最終決戦に残って手ごたえをつかんだのか、ネタのキレやネタ後の一言が1本目よりも仕上がっていた。中でも「社長、初めまして」パンチラインだったと思う。

 個人的な採点は92点。

 

4組目

まとばゆう

 ネタは「イントロソング」。既存曲のイントロに自作の詩を乗せて、歌い出しにつなげるというゲーム性のあるネタで、ある意味ジャルジャルの校内放送や、今回の押しだしましょう子とも通じる部分があるかな。

 ネタ(曲)によって面白さにムラが出たかなという印象。放屁という下ネタに絡めた「タッチ」や、風刺(天下りや舛添の温泉ネタ)を込めた「ドラえもん」は掛け値なしに笑えたけど。そう言えば、ここ数日ウーマンラッシュアワーの「THE MANZAI」での風刺ネタが賛否両論を呼んだが、まとばみたいに軽快なメロディーとボーカルに乗せてあえてサラッとやるスタイルの方が、風刺で人を笑わせるのに合っているのではとふと思った。ラストの星野源「恋」は、ちょっとトリに持ってくるには弱いネタで残念。

 個人的な採点は89点。

 

5組目

ゆりやんレトリィバァ

 ネタ後に司会のチュートリアル徳井義実をして「あいつはテレビ朝日出入り禁止でしょうね」と言わしめた禁断のドラえもんネタ。若干前の出番のまとばゆうと被っているが、それもなんのそので笑いをかっさらった。特にtwitterのくだりは切実そうで笑えた。ニッチェの江上が「相当ストレスたまってんだろうなと思った」とネタ後に心配のコメントを出していたのが物語っている。

 ただ途中で、「ぼく」と言うべきを「わたし」と言って慌てていたのを受けて、私は「ネタを飛ばしたのか?」と思った。ネットの感想を拾うと、あれは台本通りらしいのだが(予選でもやったネタなので知っている人がいても不思議ではない)、その後のセリフ回しももたついているように見えたので、私は録画を見ていてガチでとちったのかと勘違いした次第である。

 ただ、負け惜しみを言うわけではないが、やはりトチリと思わせるくだりはなくて良かったのではないか。直前のtwitterネタが非常に面白かっただけに、そこを省略してテンポよく自虐ネタを放り込んでほしかったという思いがある。オチらしいオチもなく、見終わりがふわっとしていたな。ゆりやんはこういうネタ多くね。

 個人的な採点は90点。

 

 さて全組のネタがつつがなく終了し、審査員の投票結果は以下の通り。

優勝 ゆりやんレトリィバァ 201

 

2位 牧野ステテコ 89

3位 アジアン 47

4位 ニッチェ 33

5位 まとばゆう 31

 

 個人的に戦前の予想で優勝に挙げていたゆりやんが、実際には過半数の票を得て初代女王に輝いた。まあ納得の結果と言えよう。今年ももうすぐ終わり、年が明ければR-1の予選がすぐに始まるが、「THE W」初代女王のゆりやんはどうするのか。3年連続R-1ファイナリストの面目にかけて、2冠を狙いに来るのか。

 そういう意味で、2018年のお笑い賞レース界は目が離せないと言えよう。とにかく、ゆりやんはおめでとうございます。

「THE W」決勝戦感想その4

◆ファーストラウンド

第5試合

どんぐりパワーズ(ワタナベエンターテイメント)×ゆりやんレトリィバァ(よしもとクリエイティブエージェンシー)

 ファーストラウンドのトリとなる第5試合、先攻はコンビの合計体重200キロ超をウリにしている、どんぐりパワーズ。肥満外来に来た患者と看護師、という一見目新しい設定に引き込まれるものこそあったが、ナース役のみなこが患者役のあいこを、その説得力のない体型で治療へと激励する展開に終始するという内容には食い足りなさが残った。

 ただナース役のみなこは、体重103キロのあいこより若干軽い100キロでありながら二の腕のダルンダルンぶりとか後ろ姿のフォルムとかに特徴があり、その特徴をうまくネタに織り込んでいたと思う。後ろ姿での説教など、カメラワークもよく計算されていた。一見変哲のないネタを、演者の特性(てか体型だが)を最大限に生かすことによってオリジナリティーを高めていたと思う。それでもネタの途中で差し挟まれる「ねえ?」は、ジングルとしても弱いと感じたが。

 個人的な採点は83点。

 後攻はR-1ぐらんぷり3年連続ファイナリストであり、優勝候補に目されているゆりやん。アメリカの女子学生「ユリヤン・ターナー」に扮し、ミスコンに出場して懸命に自己アピールするネタだ。

 ネタのスタイルそのものは、初めて彼女が決勝に上がった2015年R-1のファーストラウンドでやった受賞コメントのネタに酷似している。また、ネタの使い回しも見られた。アメリカ人女子学生が別れ際に翌日の待ち合わせ時間を確認するネタだが、これは2015年R-1の最終決戦で既に披露している。正直言って最終決戦に向けてネタを温存したな、という邪推もしたくなったが、それでも流暢な英語の合間にうざい関西弁を入れてくるスタイルは鉄板で笑いを取れると再認識した次第だ。

 個人的な採点は88点。

 果たして審査員の投票結果は、どんぐり56票×ゆりやん345票。ファーストラウンドで最大の票差をつける貫録を見せて、ゆりやんが最終決戦へ最後の勝ち名乗りを挙げた。

 

 改めて、最終決戦の進出者は次の通り。

 

ニッチェ

アジアン

牧野ステテコ

まとばゆう

ゆりやんレトリィバァ

 

 改めて、牧野ステテコの名前の異色さが目を引くwこの5組が立て続けにネタを披露し、初代の「THE W」王者が決まるのだ。試合消化の早い順のため、ニッチェやアジアンは不利、ゆりやん有利の流れが予想されるが果たして?

 

 続きます。

「THE W」決勝戦感想その3

◆ファーストラウンド

第4試合

まとばゆう(フリー)×押しだしましょう子(フリー)

 事務所に所属していないフリー芸人同士の対決。と言っても、まとばはR-12015覇者じゅんいちダビットソンのいるアミーパークに所属した経歴を持つが、押しだしまは鳥取市役所職員が本業というゴリゴリのアマチュア芸人。大会前から「にゃんこスター」枠的な注目を受けていた出色のファイナリストである。

 先攻のまとばは、自信作と思われるネタを投入。「♪手短に~」というキャッチーなジングルを使い、洋画やテレビドラマ、アニメの名作をその主題歌のメロディーに乗せて紹介した。

 4分の持ち時間で、数えてみると実に14本の作品を紹介し、かつ「手短に」毒を混ぜながら軽快に笑いのポイントを稼いでいく。特に面白かったのは「うる星やつら」での「♪すべては男子の妄想」だ。

 聴いていた人は「おいおい、『うる星やつら』は女性である高橋留美子先生の作だろう」と一瞬戸惑ったであろう。しかし、この歴史的な漫画、そしてアニメが世間に発信されたことで、現在の美少女ゲームの「さえない男子の前に美少女がぞろぞろ出てきて求愛する」てな基本設定が形作られたとはいえないだろうかwまとばはさらりとキーボードを弾きながら歌いこなしているが、なかなかに複雑で高度なギャグだと思った。

 個人的な採点は91点。

 後攻は押しだしま。準決勝において、歴戦の勇者おかずクラブを驚愕(きょうがく)させた彼女のネタは「ちゃんこ鍋の具材をトーナメントで決める」というものだった。

 正直言って、予選の段階でこのネタを彼女がやっていると聞いたとき、すげえツボに来たwこういう架空の遊びをそのままピン芸のネタにしてしまうというのは、ある意味今年のM-1でジャンルジャルがやった校内放送のネタとやっていることが近い。しかも押しだしまの場合、架空のゲームの題材が「ちゃんこ鍋の具材」である。この発想、今大会の「THE W」においては屈指のアイデア力とは言えないだろうか。

 ふたを開けてみれば、アマチュアなりのネタの詰めの甘さを感じた。準決勝(押しだしまは準々決勝と誤っていたが)を雑に省略したのはもったいなかったし、決勝の豚×蟹ももう少し対戦に見せ場が欲しかったところだ。ただ優勝の決め方の投げっ放しぶりを含め、何だか票を投じてしまいたくなる危うい魅力に満ちたネタをアマチュアの彼女はやり切ったと思う。

 個人的な採点は92点。

 審査員401人の投票結果は、まとば286票×押しだしま115票。まとばがキャリアでの一日の長を見せつける形で快勝した。しかしタレント審査員の新川優愛は、押しだしまのネタ後は涙を流して笑うほど彼女のネタにツボッてしまっていた。その光景が自然に受け入れられるほど、押しだしまのネタも爪痕を確実に残したと思った。

 

 続きます。

「THE W」決勝戦感想その2

◆ファーストラウンド

第2試合

アジアン(よしもとクリエイティブエージェンシー)×紺野ぶるま松竹芸能

 テレビは約3年ぶりとされるアジアンのツッコミ・隅田。ブランクが懸念されたが、カラッとした声質でのきっぷのいいツッコミは健在で安心した。

 むしろ見ていて心配になったのはボケの馬場園のエンジンのかかり具合であった。街で声をかけられたファンへの対応をテーマにした漫才であったが、どうも「隅田さんを楽器にたとえたら…」「隅田さんを春の七草にたとえたら…」のボケの爆発力が今一つだったと思う。隅田の横顔を「し」「レ」にたとえたのは笑えたが、もっと馬場園らしい突拍子のないボケをポンポン放り込んでほしかったうらみが残った。

 個人的採点は88点。

 後攻の紺野は、喫茶店という公の場で繰り広げられる男女の別れ話コント。主人公の紺野が、なぜ浮気をしてしまうのかという自己分析で「コミュ力が高いから」という変化球を放つナンセンスな内容だ。

 テレビで見るより、生の舞台で見た方が面白いんだろうなと思った。実際、自分がいる店の近くの席でこういうカップルのけんかがやられていたら、不謹慎ながら両肩を震わせて笑ってしまうだろう。「ゴッ、ゴッ」とかのワードにセンスを感じたので、その辺のネタの広げが欲しかったところだ。

 個人的な採点は82点。

 対戦結果はアジアン300-101紺野でアジアンの快勝。2005年M-1ファイナリストが初の女性芸人王座にリーチをかけた。

 

第3試合

中村涼子(ワタナベエンターテイメント)×牧野ステテコ浅井企画

 個人的には、この対戦がもっとももつれる勝負になるとみていた。今回の「THE W」と同じ対戦形式で行われた2014年のキングオブコント1回戦シソンヌ×巨匠(54-47でシソンヌ勝利)のような名勝負を期待していた。

 「女性版マツモトクラブ」と称される先攻の中村は、最初の1分間に限ればファイナリストの中でも突出していた出来栄えだったと思う。カッコいい男性の幽霊と恋愛関係に陥るという筋立ては少し見る人を選ぶかもしれないが、まあその手の物語は上田秋成雨月物語」の頃からあるからなあ。ある意味古典で、ごまかしの利かないネタによく挑んだと思う。

 比較対象とされるマツモトクラブは一つのシチュエーションをじっくりと演じ込むタイプのコントをよく作るが、中村はジェットコースター的な展開で30歳女性と幽霊男性の恋の行方を追う。「幽霊に抱きしめられると冷たい」という前振りを利かせたオチは意表を突かれたが、なにしろ展開が早くて笑いにくい雰囲気のネタになったのが惜しまれる。ゆうくんが実際に主人公の両親に会いに行くエピソード、見てみたかったなあ。このコントは10分、15分でもやれると思う。

 個人的な採点は90点。

 後攻は馬鹿よ貴方は・新道に「出て1秒で面白い」と太鼓判を押された牧野ステテコ。いやあ、俺は録画で見たんだけど午後9時台にM字開脚しながら股間を指さして「パワースポット」つったんだろ? ようできたなw

 まあシンプルな内容ながら、キャラ設定とセリフ回しの塩梅が絶妙だと思った。キャラの高慢さと自虐的なギャグとのバランスも取れていて、ある種の清潔感すら感じるw後半、ポールに犬がつながれたとかおとなしめのネタが来ていたので、そこはもっと冒険してもとは思った。

 個人的な採点は89点。

 果たして、審査員の投票結果は中村190-211牧野。アングラ芸人の乾坤一擲(けんこんいってき)、牧野ステテコが最終決戦へ名乗りを上げた。

 それにしてもこれ、録画で結果を見たときはすげえ驚いたぜ。過去の記事で決勝戦の結果を予想したとき、票差まで一応書いたんだけど、中村190票、牧野211票てのが全く同じだった。「おいスタッフ、このブログ見とったんちゃうけ?」とありえないことを疑ったほどであるw

 

 続きます。

女性芸人をダシにした女性差別を許さないカウンター行動の宣言&「THE W」決勝戦感想その1

 今回から「女芸人日本一決定戦THE W」決勝戦日本テレビ系)のレビューを始めるが、その前に宣言しておきたいことがあります。

 それは「女はお笑いが分からない」「女はお笑いに向かない」「女芸人は、男の芸人よりも劣る」といったすべての「女性芸人をダシにした女性差別の発言」は絶対に放置してはならない、ということです。今回の「THE W」決勝戦放送の前後(特に放送後ですが)において、上記の趣旨の発言がネットに非常にはびこりました。

 ある程度その手の事態は大会開催発表時から予想はしていましたが、それでも私は辟易(へきえき)しました。そうした心ない差別発言は予選からベストを尽くしてたたかってきた636組の女性芸人の皆さんを冒瀆(ぼうとく)するものです。同時に、こうした状況をお笑い好きの端くれとして放置するわけにはいかないと思いました。

 そういうわけで、民族差別を扇動するヘイトスピーチに抗議する市民のカウンター活動のように、女性芸人をダシにした多数の女性差別発言を許さないカウンター活動もやっていくべきだなと思うに至りました。微力ではありますが、自分なりにネット上にはびこる女性芸人への差別的な言動を一掃する取り組みを実践していくつもりです。

 

 さて、「THE W」決勝戦のレビューに入りたいと思います。

◆ファーストラウンド

第1試合

はなしょー(ワタナベエンターテインメント)×ニッチェ(マセキ芸能社)

 ニッチェに憧れ、この決勝戦ファーストラウンドでも対戦を所望したというはなしょーが先攻。胸を借りる舞台で繰り出したのは昼休みでの女学生の秘密の会話…という一見オーソドックスな設定のコントだ。コント中に名前が出てきた広瀬すずが、実際に「先生!」という今年公開の映画で教師との恋愛を演じていたので、タイムリーと言えばタイムリーなのかw

 教育実習生に恋したというはなを全力で否定にかかるしょーこ…というシンプルかつストロングスタイルのコントだが、しょーこの言動に対するはなの「頭が鉛のように重い…」「言葉のブレーキをかけよう」てなコメントが結構ツボる。はさみ込んでくるはなの顔芸も印象的だ。この辺、顔芸はイモトアヤコ、コメントはハライチ澤部とナベプロの先輩の影響を感じなくもない。

 まあ後半は、もう一展開欲しかったところ。導入部でせっかく他の生徒に隠れて会話し、大声を出してはいけない設定もあったのだから周りの生徒に知られてしまうという展開になって、そこからのオチを見たかった。あとラストの「キビシー」は財津一郎やがなw

 個人的な採点は85点。

 

 後攻はニッチェ。ファミレスチェーンを手掛ける女性社長が、店舗の状況を潜入調査するという、こちらもコントの題材としてはよく見かけるタイプの作品であるが、はなしょーの一枚も二枚も上手を行った。

 江上の「宝ー!!」や顔芸もさることながら、店長を演じる近藤のきっぷのいい正論キャラが、コントにある種の心地よさをもたらしている。世間を見渡してみれば、森友・加計問題をはじめとして権力者に媚びて甘い汁を吸おうとする連中の多いこと。そういう意味で、忖度(そんたく)をしない姿勢を貫く近藤店長には大いにシンパシーを覚え、気持ちよく江上のリアクションを楽しむことができた。まあ時給は労働者の権利として上げてもらうよう要求していいと思うが。

 このコントならキングオブコント(KOC)の決勝でも一定の評価はされそうだが、ニッチェは一度としてKOCの決勝に上がったことがないんだよな。10回開催して、ほかの女性コンビがKOCの決勝に上がったこともない。本当、その審査基準には疑問を抱かざるを得ないとこの場を借りて書かせていただく。

 個人的な採点は91点。この勝負の個人的な軍配はニッチェに挙げた。

 

 第1試合、審査員401人(タレント審査員柴田理恵、ヒロミ、生瀬勝久新川優愛吉田沙保里若槻千夏の6人と一般審査員395人)による審査結果ははなしょー116票、ニッチェ285票。ニッチェが貫録を見せつけて得票率7割、最終決戦進出を果たした。

 

 続きます。