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「LIFE!」コント「未来戦士ハライゾン」に物申す(NHKテレビ8月14日放送分)

 2017年度に入って不定期特番放送となった内村光良座長のコント番組「LIFE!」。今年度2回目となる今回の放送では深田恭子中川大志新日本プロレス棚橋弘至といった多彩なゲストを迎えてさまざまなコントを披露したが、少し物申しておきたいコントがあったので差し当たりこれだけをレビューしたいと思う。

 そのコントは「未来戦士ハライゾン」。統計上では現役世代(15歳~64歳)2人が1人の高齢者世代を支えるという超高齢化社会をテーマにしたヒーローものコント、ということで切り口そのものは悪くなかった、のだが。

 ぼったくりバーに引っかかり、ガラの悪い店員(田中直樹、シソンヌじろう)に詰められるムロツヨシ演じる会社員。そこへ現れたのは近未来的なスーツに身を包んだヒーロー中川とヒロインの石橋杏奈…だったのだが、どうも様子がおかしい。それもそのはずで、彼ら2人は板を持ち上げており、その上には内村演じる老人ら3人が飄々と乗っかっていたのである。ちなみに残り2人の老人は人形であるw

 未来戦士ハライゾンの中川・石橋はすぐさま店員を退治したいのだが、上の老人を落とすわけにもいかず手も足も出ない。そうしたもどかしさを笑うコントであるのだが、私は番組サイドの思惑に沿って笑うことはとてもできなかった。

 なぜかと言えば、まさに「年金など社会保障の恩恵に浴する高齢者世代と、恩恵を受けることができない若者・中堅世代」の分断やいさかいを誘発するような内容のコントだったからである。なにしろ老人役の内村が中川・石橋を指して「こいつら年金もらえないから、俺はギリもらえるけど」とまで言うセリフがあった。

 これはダメ押しだろう、悪い意味での。タイトル自体「ハライゾン(払い損)」という文言が入っているのだから予想できた展開ではあるのだが、これでは「ギリ年金をもらえる」世代への世間の怨嗟(えんさ)を煽ることにほかならない。

 こうしたコントは、ハッキリ言ってしまえば「年金をもらえる世代、もらえない世代」という断絶を引き起こした当事者の責任を覆い隠す役割を果たすものでしかならなくなる。その当事者とは、言うまでもなく時の政府である。

 もっと具体的に言えば、間もなく発足5年になる安倍自公政権である。アベノミクスがどうのと言っていたが、待てど暮らせど庶民にその恩恵が行きわたったとは言えず、逆に景気のカギを握る個人消費はヒエッヒエの状態が続いている。

 超高齢化社会にもかかわらず、安倍政権は社会保障に対する手厚い手当ては今のところ見られない。それどころか年金の受給においても、受給開始年齢を75歳まで遅らせようという声が識者の中から出てくるくらいだ。

 参考までにしんぶん赤旗の報道はこちら。

 朝日新聞の報道はこちら。

 現実には老いも若きも年金はじめ社会保障の恩恵にあずかれない残酷な未来が待っているにもかかわらず、「LIFE!」はいまだに世代間の争いを煽る使い古されたプロパガンダをコントに取り入れているのだ。

 それはまさに、大企業を優遇し社会保障の切り捨てに邁進(まいしん)する安倍自公政権に忖度(そんたく)したコントをNHK、ひいては「LIFE!」スタッフが執り行ったと言わざるを得ない。この状況は、かつて「総理大臣だからといって、何をやってもいいと思ったら大間違いだよ!」と語った宇宙人総理の母親(樹木希林)が知ったら嘆くものだろう。

 「LIFE!」の新作コントは来月の9月18日に放送されるとのこと。これまで良質な社会派コントを世に送り出してきた同番組に対しては、ぜひとも時の権力者に「忖度」することのない骨太の新作コントをきっちり披露して、私のような人間に「杞憂だった」と思わせてほしいところである。