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田村正和さん死去

 俳優の田村正和さんが亡くなった。77歳。

 40歳代後半の私にとって、田村さんはご本人の演技よりも「ものまね」で鮮烈な印象が残る人であった。そもそも私が田村さんを知るきっかけになったのは、保育園時代にテレビで見た「カックラキン大放送!!」(日本系)であった。同番組で異彩を放っていたラビット関根(現・関根勤)が、阪東妻三郎の忘れ形見である田村三兄弟のものまねをしていた。

 「田村正和です」「田村亮です」「田村高廣です」

 いや全員一緒やないかい!! と当時保育園児だった私はテレビの前でツッコんだ。われながら嫌な子どもであるw

 「コサキン」として関根の盟友であった小堺一機も、田村正和のものまねを得意としていた。彼は田村正和と同世代の二枚目俳優、近藤正臣のものまねを必ずセットにしていた。

 「コンドーです!」

 私は小堺の田村・近藤のものまねを目にして「そうか、田村さんと近藤さんはライバルなんやな!」と勝手に刷り込まれていたw

 

 私が俳優・田村正和の演技をリアルで目にしたのは「うちの子にかぎって…」(TBS系)だったと思う。新聞は「二枚目の田村がコメディーで三枚目に挑戦!」と書きたてていた。現代っ子の児童に振り回される田村の演技は好評で、後年続編シリーズやスペシャル番組が組まれることになる。

 

 ただ田村の代表作といえば「古畑任三郎」(フジ系)になるだろう。それまでなんだかんだ言って演技に二枚目の名残があった田村が、繊細さを感じさせるボソボソしゃべりを捨てて甲高い声で「日本のコロンボ」を演じる。そのさまはこれまでよりもさらに「ものまねネタとしての田村正和」を消費させることとなった。当時飛ぶ鳥を落とす存在であったSMAP木村拓哉も「古畑拓三郎」として田村をコピーし、後年の正月特番「古畑任三郎vsSMAP」(フジ系)につながった。

 そのものまねネタの頂点となったのが「R-1ぐらんぷり2016」王者のハリウッドザコシショウであろう。木村拓哉と同世代である彼は、古畑のキャラクターを縦横に膨らませて「ハンマーカンマー」という代表作を完成させる。

 そしてR-1ぐらんぷり2016決勝の最終決戦、ザコシショウはラストのネタに古畑任三郎を選ぶ。「最後は古畑任三郎でお別れしたいと思います」という彼の口上をかき消すほどの会場の大熱狂。観客の女性は「やったー!!!」と歓喜した。日本のお笑い史に燦然(さんぜん)と残る名場面だったと思う。

 …とまあつらつら書いてしまって、私の文章で田村正和の偉大さがどれだけ伝わるかはいささか不安ではあるw ただ本当に、田村さんは日本のお笑い界に影響を与えた名優であるという事実は、いささかも揺らがないと私は確信している。

 田村正和さんのご冥福をお祈りします。