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最もフェミニストに絶賛されるコントはインポッシブル「必殺仕事人」?

 新型コロナウイルス問題の影響でドラマやバラエティー番組が次々収録中止を余儀なくされる中、11日に無事放送された「爆笑ドリームマッチ」(TBS系)。かなり久々の放送だったが、視聴率は15%を超えたそうで大成功と言っていいだろう。

 「ドリームマッチ」でとりわけ絶賛されたのが、ハライチ岩井勇気×渡辺直美のコンビ。惜しくも優勝は逃したが(優勝はロバート秋山×千鳥ノブ)、岩井が「塩の魔人」、直美が「醤油の魔人」に扮し、キャッチーなBGMで踊りながらやりとりするコントはtwitterのトレンドワードに上がるなど好評を博した。

 

 5chのお笑い芸人板にあるM-1グランプリ2019スレでも岩井×直美のコントの評判は上々であったが、少し気になる書き込みを見かけた。

 

58名無しさん (ワッチョイW c636-9EjJ)2020/04/12(日) 06:41:52.58id:xfq+56KR0>>90>>367
>>57
岩井は今回でフェミ層からの人気が上がったと思う。実は誰も選んでない女芸人の渡辺に唯一ラブコールを送り続け、渡辺ワールドかと思わせる唯一無二の世界観を作り上げ、彼女を立てつつ、爆笑を引き起こし、男女の強みを存分に発揮した。理想的なエスコートをしたと思う。

 

 上記の書き込み主は「醤油の魔人×塩の魔人」のコントを書き上げた岩井がフェミニストの評価を得たとしている。大まかな理由は、フィーリングカップル方式で行うコンビ決め(「ドリームマッチ」の定番である)で人気が乏しかったらしい直美を岩井が選び、かつ彼女の持ち味を最大限に引き出すコントを作ったから…のようだ。

 うーん、それはどうかね。SNSをくまなく探ったわけではないが、少なくとも私のtwitter(@masatowishiguro)のタイムラインに上がった範囲ではフェミニストのアカウントからの岩井×直美への賞賛ツイート自体見当たらなかった。上記の書き込み主は、岩井が直美に対して「理想的なエスコートをした」とも書いているが、そもそもフェミニストの活動は「男性に理想的なエスコート」を求めているわけでもないんでないの、と私はみている。

 

 そんなことをつらつら考えているうちに「あ、フェミニストが間違いなく絶賛するコントあったやんけ!」と私は思い当たった。そのコントは、インポッシブルの「必殺仕事人」である。

 インポッシブルは2005年結成。吉本興業所属で「えいじ」「ひるちゃん」の男性2人のコンビである。

 「必殺仕事人」はインポッシブルの出世作および代表作と言っていいコントで、この作品で彼らを知ったお笑い好きも多かろう。私もその1人である。

 本作は文字通り時代劇の名作「必殺仕事人」のパロディー。舞台を現代に置き換え、故・平尾昌晃作曲の本家のテーマをBGMに(ルミネなどの舞台ではスキャット)、一見どこにでもいるような市井の人々が独自の手法で悪を成敗する一部始終をショートコント形式で見せてくれる。ちなみにコントの冒頭、「必殺仕事人20〇〇(西暦)」とコールされる。

 私自身、5chの上記の書き込みを見てもやもや考えているうちにという、まさについ最近気づいたのだがインポッシブルの「必殺仕事人」では、実に多くの性犯罪者が成敗されているのだった。ネタバレになるが、以下に該当するショートコントを挙げる。

 

・「今日は誰を痴漢してやろうかな」と企む痴漢常習犯。そこへ巨乳を揺らして通行する女性が現れる。よだれを垂らさんばかりに痴漢は彼女の胸を公然を凝視するハラスメントに出るが、女性はその巨乳で痴漢の顔をはさみ、窒息させながら胸を左右に揺らして相手の首をへし折る。血反吐を吐いて絶命する痴漢。女性は「あ~あ、またおっぱいが汚れちまったよ」と一言。人呼んで「巨乳のユウコ」。

・舞台は満員電車。吊り革につかまって立つ男性が「やっぱ痴漢は最高だぜ!」と隣の女性の尻を撫で回す。そのさまを数メートル離れた場所で目撃した男性は「ちょっと前すいません…」と恐縮しながら右手を前に出して、痴漢の方へ移動。その右手が痴漢の横腹をズブリと貫く。ここでの痴漢の絶命寸前の表情が秀逸w 人呼んで「ちょっと前すいませんのタカシ」。

・朝の登校時間に「遅刻しちゃう」と駆け足の女子高生。その姿をニタニタして眺める男性。走る勢いで女子高生のスカートがめくれ、男性は手持ちのカメラでパンチラを盗撮する。女子高生のスカートは「シャキーン」と音を立てて円盤状となり、さらにフィギュアスケーターよろしくクルクルと回転して男性の前を通り過ぎた。男性は「いいのが撮れたぜ」と満足げにつぶやいたその刹那、胴体を切り離されて絶命する。女子高生のスカートは強靭(きょうじん)なカッターだった。人呼んで「女子高生のメグミ」。

・「いいじゃん、入ろうよ」とホテルの前で恫喝を交えながら女性の腕を引っ張る男性。彼は同意のない性交渉、いわゆるレイプをやろうとしていた。そこへ背後から忍び寄り、レイパーの肩をたたく男性。レイパーが「何だよ」と絡んだ刹那、オーバーハンドで振り下ろされた拳により首をめり込まされ絶命。レイパーを仕留めたのは、人呼んで「ただの怪力男ヘラクレス西谷」だった。

 

 いかがであろうか。私はこうしたインポッシブルの一連のショートコントが、フェミニストというか、性被害を受けてきた女性すべてを救済する内容になっているのではないかとみている。

 たぶんインポッシブルの2人は、フェミニズムだとか性犯罪、性加害、性暴力への意識を全く意識せずに「必殺仕事人」のコントを作ったと思う。しかし現実には、司法において性暴力を無罪判決とする状況が長らく続いてきた。参考までに、性暴力の無罪判決に抗議する集会を報じた「しんぶん赤旗」の記事はこちら

 

 「必殺」シリーズに出てくる仕事人たちは、弱者の恨みを晴らすため、法で裁かれることのない悪人を独自のやり方で成敗していく。最近、ようやく性加害者への有罪判決が下されるようになったが、依然として彼らが法的にお目こぼしされている立場なのは変わりがない。

 だからこそ、性被害者の思いをくみ取ったかのようにちまたにあふれる性暴力を断罪するインポッシブルの「必殺仕事人」コントへの今日的な価値はますます高まっていると言える。ぜひとも彼らには、新たな仕事人を作り上げて性犯罪者にみじめな末路を用意するコントを精力的に世に送り出してほしいと願う次第だ。