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野球漫画最高のファインプレー!!!『プレイボール』電子書籍版4巻

 世には星の数ほど野球漫画が描かれてきた。そのすべてを網羅しているわけではもちろんないが、ふと「野球漫画で一番のファインプレーて誰のだろう?」などと考えてしまった。少し考えたが、パッと頭に浮かんだプレーを吟味して決めた。

 まず試合についての説明だが、ちばあきお不朽の名作『プレイボール』(集英社)での墨谷×東都実業である。主人公の谷口タカオが1年生ながら、フォークボールの連投で強打の東実打線をキリキリ舞いさせるやつね。この試合自体が野球漫画史に残る壮絶な名勝負であるが、先を急いで私が選ぶ「野球漫画最高のファインプレー」が出た場面について説明する。

 

 試合は9回裏の墨谷の攻撃、ツーアウトながら満塁。スコアは東実12-10墨谷。9回表に、谷口の疲労に乗じた東実が一挙7点を追加して墨谷に10点差をつける。

 しかし試合前の猛特訓の成果で、プロ注目の東実エース・中尾の攻略に成功した墨谷打線はつるべ打ちで一挙8点をもぎ取った。「どういう試合だよ」とツッコむ御仁もいようがwその辺は現物を読んでもらいたい。

 そして9回裏、2点差に迫っての2死満塁。打席には2年生の3番山口。前の打席でライト線を破るタイムリ三塁打を放っており、いわゆる「当たっている」打者である。一打同点もありうる局面。最高の形で谷口につなごうと意気込む山口だったが、緊張でストレートのタイミングが合わず2ストライク1ボールと追い込まれる。

 ネクストバッターズサークルの谷口はタイムをかけ「このさい自分を落ち着かせた方が勝ちですからね」と山口に助言する。この試合で谷口は、ナインに「相手投手の呼吸を見て、自分も呼吸を合わせる」というリラックス作戦を伝授していた。打席を外して入念に中尾の呼吸を見た山口は、平静を取り戻して打席に戻る。

 東実バッテリーに遊び球はなし。とどめとばかりに放った中尾のストレートを乾坤一擲(けんこんいってき)と、山口はバットを振り抜く。

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ちばあきお『プレイボール』電子書籍版4巻112ページから)

 快音を残して打球はセンターバックスクリーン方向へ。東実のセンターが懸命に背走する。

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(同上113ページから)

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(同上114ページから)

 『プレイボール』電子書籍版4巻113ページの最後のコマから、そして114ページの1ページ分をまるまる使って東実センターのジャンピングキャッチが描かれている。ジャンプの際に「くそっ」と言っていることから、センターは一か八かの気持ちで捕球を試みたのだろうな。

 115ページでは墨谷、東実両ベンチの選手たちが打球の行方を見守っているのを2コマで描写。そして116ページでは審判が、うつ伏せに倒れ込んだセンターががっちり白球をグラブに収めているのを確認し、大ゴマでアウトを宣告している。試合終了となり、シード校東実は超無名の墨谷に苦しみ抜いて勝利した。

 改めて、東実センターの好捕は素晴らしいものがあるな。もし打球を抜かれたり、グラブにいったん収めてもこぼしていたりしたら、満塁の走者はすべてホームインした可能性が高い。谷口に回すまでに勝負が決したかもしれないのだ。

 敗戦が決まり、打順を回せなかったことを山口は谷口に泣いてわびる。しかし谷口はすがすがしい表情で「相手の守備がすばらしかった」と山口を励ますのだった。まあ山口の快打といい東実センターの好捕といい、まさに「打ちも打ったり、捕りも捕ったり」てやつかもしれない。

 

 それにしても東実センターのファインプレーを読み返すと、リアル甲子園でのあのプレーを思い出すな。2007年夏の選手権での佐賀北×帝京の一戦である。選手権の優勝経験(1995年)がある帝京優位で進んだこの試合、流れを変えたのは延長13回表の佐賀北センター・馬場崎のプレーだった。

 帝京エース・垣ケ原が放ったセンター越えの大飛球。これを馬場崎はフェンスにぶつかりながらキャッチし、観衆の大きな拍手を呼んだ。

 確か馬場崎本人が後のインタビューで言っていたと記憶しているが、センター越えの打球って左中間や右中間の打球より捕りにくいらしい。目線を切って打球を追わないといけない分、捕球が難しいのだとか。

 東実のセンターも、それだけ難易度の高いファインプレーをしたってわけやねw その裏、9番の馬場崎は先頭打者として三遊間を破るヒットを放ち、2番井手のサヨナラヒットで自らホームへ滑り込んでいる。

 攻撃の表裏の違いはあれど、勝利への貢献度については東実センターと佐賀北の馬場崎は重なるものが大きいと思う。そんなわけで、私は「野球漫画史上最高のファインプレー」に東実のセンターを推すものである。

 

 ちなみにこの東実のセンター、9回裏ノーアウト2・3塁の場面でもファインプレーを見せている。墨谷の6番・村松のセンター越えの大飛球。ここでも東実センターは、スタンドイン寸前の打球をキャッチしている。3塁ランナーの谷口がタッチアップを成功させたので、記録上は犠牲フライとなったが。

 東実センターは打順も3番を担っており、まごうかたなきチームの中心選手なのだが、名前が一切出ていないというねw いや、出そうぜと。もっとも東実で名前が出ている選手はエース中尾と1番サードの中井くらいであるが。