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『ドラえもん』21巻「精霊よびだしうでわ」

 twitterでも少しやったが、冬の足音が聞こえ始めたタイミングでこの話のレビューを。国民的漫画「ドラえもん」において有名かつ感動的なエピソードの一つに数えられるであろう「精霊よびだしうでわ」。

 この話はとにかく「雪の精」の存在が有名だと思うが、個人的にはドラえもんひみつ道具「精霊よびだしうでわ」で最初に出てくる「火の精」は非常にキャラが立っており、個人的に印象深い。少年の容姿をした火の精は、一言目にこんなセリフを発する。

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(『ドラえもん』21巻183ページから)

 「ところでなにをもやせばいいんだ?」て、まるでベテラン放火犯のような一言w両手両足を広げた姿勢もツボである。不知火型の土俵入りの途中みたいでかわいらしい。

 しかし「燃えるものなら何でも燃やす」を信条とする火の精は、ドラえもんの「そのままそこにいてくれればいいの」なんてのんびりした要求はお構いなし。思い立ったが吉日、とばかりにこの行動力である。

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(同上)

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(同上)

 のび太の部屋を一見して一番燃えやすそうなカーテンに目を付ける。これはプロの手口というやつですw

 そして当然止めに入るドラとのび太に対して、頭部全体を火炎と化して問答無用とばかりに攻撃するというね。かわいい少年の見た目に反する蛮勇を振るった火の精だが「近くの火(ここではパパのタバコ)が消えるとその存在も消える」という決まり事であっさりと退場した。

 この存在感を目の当たりにすると、火の精で全編やっても良かったのではと思ったりする。ドラとのび太の心労が半端ないだろうがw

 

 そして「精霊よびだしうでわ」を身に付けたのび太は、ある意味ダジャレで雪の精を呼び出してしまう。「ドラえもん」は意外とダジャレの少ない作品なので(まあ主人公の名前自体がダジャレみたいなもんだが)、こうした展開は新鮮ではある。

 ただ個人的には、初めてこの話を読んだ頃からあまり雪の精をいいキャラだと思わないのよね私。空き地でのび太が雪の精と遊んでいたところへ、自宅のストーブがついたとドラが知らせに来る。ここで雪の精の存在を知ったドラは非常に驚くのだった。

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(『ドラえもん』21巻187ページから)

 のび太の「3」の口の形が妙に腹立つwそれにしてもドラの口ぶりは、何か雪の精について知っているかのようである。しかし笑顔の雪の精にドラは吹き飛ばされ、真相はやぶの中となった。

 私が雪の精をいまいち好きになれないのは、こういう傍若無人さからである。のび太の友人であるドラを吹き飛ばして「あんなのほっときましょ」と言い放ち、吹雪を強める。「雪はもういいよ」とのび太が言うにもかかわらず「春なんてこさせるもんですか」と突っぱねる。

 いやあ、自己中すぎね? ひょっとして雪の精は過去に雪を降らせまくって、国の一つ二つつぶしたことがあるのでは…ドラはそれを知っていたのでは…と思ってしまう。

 この話を小学低学年で初めて読んだとき、雪の精がのび太の高熱を吸い取るラストにも「それぐらいはしないとね」と感じたものだ。われながら嫌な子どもであったw

 

 さて「精霊よびだしうでわ」の回が初めてアニメ化されたのは、1981年1月2日放送分のことという。私は当時の記憶がないが、検索をかけたところ当時の話を記事にしているブログを発見した。

ameblo.jp

 

 雪の精のデザインが、原作とだいぶ違っていたんだな。火の精は原作に忠実な感じだけど。

 ただ私はこちらの初出のアニメ版のビジュアルの方が、おとなびてミステリアスな感じがいかにも「雪の精」て感じで好感を持った。われながら現金だのうw

 あ、ちなみに『ドラえもん』21巻に戻るが、扉絵に出てくる雪の精は本編と顔が違うのよね。黒目勝ちで、むしろ1981年のアニメ版に近い顔立ちなのよ。さすがに関連はないだろうけど。