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「しゃべくり007」ゲストにマツコ・デラックス(日本系、11月6日放送分)

 もはや説明不要のテレビモンスターであるマツコ・デラックスが、自身の冠番組以外で2日続けてテレビバラエティー番組へのゲスト出演を果たした。どちらも日本テレビ系で5日の「行列のできる法律相談所」、そしてこの記事で取り上げる「しゃべくり007」であった。

 しゃべくりメンバーのくりぃむしちゅーは所属事務所(ナチュラルエイト)の先輩後輩ということもあって、以前からちょくちょくゲスト出演していたマツコだが、今回、同番組に出演するのは5年ぶりだったという。この間、「マツコの知らない世界」(TBS系)や「夜の巷を徘徊する」(朝日系)、「マツコ会議」(日本系)と言った冠番組を次々に立ち上げてきたマツコ。「しゃべくり007」はちょくちょく見る程度だが、普段の番宣ゲストとは違うオーラが漂っているようにすら、5年ぶり出演の彼のたたずまいから感じたと書くと、大げさであろうか。

 1時間で2組登場がデフォルトである「しゃべくり」だが、今回のは満を持したようにオールマツコの1時間。老後を心配するマツコに、先輩たるくりぃむしちゅー上田晋也有田哲平がなだめるように「マツコの家をくりぃむの家ではさむようにして住居を構え、渡り廊下を設けて交流する」という提案をするなど、普段の回では見られないしゃべくりメンバー、そしてマツコの横顔を見られた気がした。

 

 マツコのトークで一番印象に残ったのは、既にネットニュースにも取り上げられたが、2001年の元日に美容師の恋人と大げんかして別れた話である。

 けんかした彼の自宅を飛び出したら既に朝になっており、2001年の正月を喜び合う家族の声がそこかしこから聞こえる。一気につらい気持ちになったマツコはタクシーを呼び止め自宅へ戻るのだが、車中でつい嗚咽を漏らしたという。

 そこへタクシー運転手は助け船を出した。放送でのマツコの言葉は覚えていないのだが、運転手は「イヤだねえ。年が変わったからってみんなはしゃいじゃって」などと、運転中ずっとマツコを慰めてくれたという。マツコはいっそう号泣しながら乗車賃を払って帰宅し、それから3日間は中島みゆきの「タクシードライバー」を聴いた…とのことだった。

 正直告白すると、見ていた私もこのエピソードにもらい泣きした。マツコとタクシー運転手のエピソードと言えば、今はなき「マツコ有吉の怒り新党」(朝日系)でも別の話を披露したことがある。

 マツコはタクシー運転手と口論してしまう。「ここで降りる!」とたんかを切るのだが、持ち合わせが万札しかなく、運転手もおつりがなかった。「待ってろ!」と運転手はコンビニへ駆け込み万札を崩すのだが、その際の運転手の、店員にペコペコ頭を下げながら両替を頼む姿を見て、マツコは怒りを発した自分を反省する。運転手の方も戻ってきて「さっきはごめんな」とおわびし、大団円…という話だ。

 もちろんすべて本当の話ではなく、テレビ用に盛ってはいるのだろうが、こういう落語の一場面のような市井の人々との人情味あるやりとりをいくつも持っているのが、マツコ・デラックスが長年テレビで活躍できているゆえんではないかと思っている。どれだけ売れても、驕(おご)ることなく、庶民としての感覚を維持して振る舞う。これができる限り、常に本人は将来への不安を抱えているが、マツコがテレビから消えることはないだろう…と感じた「しゃべくり」ゲスト出演であった。

 

 ただし、若干の不安を覚えてもいる。特に番宣があるわけでないのに、「行列」「しゃべくり」と立て続けにマツコが出演した件だ。「行列」ではミッツ・マングローブはじめ20年来の付き合いであるオネエタレントとともに番組をジャックし、イキイキとクロストークを展開していた。そして「しゃべくり」では、ゆるキャラで唯一好きだと言い、「先生」と呼び慕う「そらジロー」と共演。しゃべくりメンバーとの「ぶつかり稽古」の流れで2回もそらジローを投げ飛ばし倒す暴挙までやってくれた。

 全く根拠はないのだが、普段のストレスを解消するかのようにゲストでしゃべったり暴れたりするマツコを見ていて「ひょっとしてもうすぐ引退するんじゃ…」などと私は考えてしまった。もちろん邪推でしかないし、そうなら所属事務所社長やくりぃむ、各テレビ局のお偉いさんが全力で引き留めるだろうけどね。

 それくらい立て続けのマツコのゲスト出演には違和感を覚えた。まあ俺にこんな心配をされるくらいマツコは多忙ってことで、何とぞ無理はしないでほしいとこちらは願うばかりである。