無料カウンター

「LIFE!」(NHKテレビ10月9日放送分)

【FWAT】

 まあぶっちゃけると、コントタイトルのネタバレまでが肝なコント。人質救出という極限状況にかかわらず、「~かもしれない」「その辺は自由に」といった曖昧な言動をする隊員たちに、たまらずシソンヌ長谷川がツッコむ。

 ただし2014年キングオブコントチャンピオンと言えど、シソンヌはコントによってはボケとツッコミがハッキリしないコンビ。いくぶん今回の長谷川のツッコミには遠慮があったかなと思わせるものがあった。まあ長澤まさみの影絵とか、何の脈絡もなくおばさんが出てくるラストとか、いい感じに脚本が投げっ放しだったのはツボに来たけどw

【悲しみの丘】

 今や日本で最も人気のある若手俳優の1人、菅田正暉が若きオットセイを演じるシリーズ2作目。いいしょっぱなからメスオットセイの踏み絵を踏むことを先輩オットセイ(内村、田中直樹ムロツヨシ)に強いられるハードな場面からコントが始まり、おらあてっきり小池百合子の「希望の党」のパロディーかと思ったぜw収録時期的に違うと思うんだが。(それにしても小池が雰囲気たっぷりに「希望の党」の結成発表をしたのもつい2週間ちょっと前なんだよな…だいぶ昔に思える)

 物語はいかにも専制君主の暴君ふうのオットセイ(塚地武雅)が登場して大きく動く。もめごとを避けてやりすごしたい内村たち「悲しみの丘」のオットセイだったが、先輩たちになじもうと改心した菅田オットセイのおかげで窮地に。菅田オットセイは状況を煽るだけ煽って(何か内村を陥れようとしているかと思った)、最後は内村と田中のアイコンタクトによりスライダーで滑らされる(おそらく滑らされたのは別人だろうが)オチを迎える。

 こういった何の救いもないオチを見させられるにあたって、私は塚地→小池百合子、内村→前原誠司、菅田→枝野幸男というふうに「希望の党」と立憲民主党に分かれる政界のゴタゴタを感じ取った次第だ。出てくるのはオットセイしかいないんだけどもw

【ナツキと歌舞伎】

 レギュラー放送時代の「梅雨入り坊や」以来の、市川猿之助出演。修学旅行の中学生たちに、歌舞伎役者夏木京介(内村)が考案したニュー歌舞伎「夏伎」を教えようとするが…。

 本格的な歌舞伎セットを用意しての、猿之助の芝居が光る。初めは中学生としてたどたどしく演技をしていたが、たたらを踏んでダン!ダン!と床板を踏み鳴らした演技には内村演じる夏木もビクッ!となっていたのが面白かったw

 市川家と浅からぬ因縁のあった夏木だったが、猿之助の厚意により恩讐を超えて2人して「宙乗り」の荒業をこなしてみせた。ムロ演じる引率教師いわく「歌舞伎の見学で5万円、実演でさらに3万円」とこちらも「希望の党」のようにぼられていたようだが、最後に猿之助の実演でもとが取れたとはいえないだろうか。

 猿之助本人は「ONE PIECE」歌舞伎でのトラブルで骨折の憂き目に遭った。ぜひともけがから回復して、「ナツキと歌舞伎」で見せてくれた怪演を本業で再現してほしいものである。

【ムロ待ち】

 今回NHKの建物内を舞台に出てくるのはムロ本人と黄金原さん(シソンヌじろう)の2人だけ。冒頭、黄金原さんはムロのほかに夢中になる男性を見つけてしまったと懊悩(おうのう)する。いったん安堵するムロ…であったが、しかしその相手は自身の演じるムローノ・マーズだった。

 北条司の傑作漫画…というか、「LIFE!」の名作コントの元ネタになった「キャッツアイ」を思い出したぜ。瞳の恋人・俊夫がキャッツの変装に翻弄(ほんろう)されるストーリーを容易に想像できましたわw

【長寿の家系】

 長澤まさみが再登場。110歳の高祖父(内村)が夫婦ともに健在という長寿一族に、嫁入りを願い出るが…?

 とにかくこのコントは高祖父で110歳役の内村、嫁の長澤を迎え入れる後継ぎ役の中村倫也、そして内村の妻を演じた池谷のぶえの演技に尽きる。長澤の高祖父を名乗る男(塚地)を看破し、内村は真相を追及する。その過程で大正三大美人と名高き柳原白蓮の名を挙げるあたり、名作朝ドラ「花子とアン」を手がけたNHKへの配慮を感じずにはいられなかったw

 高祖父の鋭い追及にしどろもどろになってしまう中村、むしろ追及はこれからだといわんばかりに声色を変えて夫の内村を追い込む池谷のぶえの怪演には目を見張るものがあった。池谷も中村も、今後新作を出すにあたって「ぜひ」と思わせる演技力があったと思う。

 中村はぬるっとした二枚目半の風貌(われながら失礼な表現)で、星野源の後釜として。池谷はその憑依(ひょうい)ともいうべき卓抜した演技力でコントを引き締める役割として、不定期放送で模索中の「LIFE!」をもり立てる取り組みに入ってきてほしいと願う次第である。

(10月13日、一部修正と加筆しました)