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キングオブコント2017決勝戦の感想その4~ゾフィーの炎上コントについて

◆ファーストステージ

・アキナ

(決勝戦2年ぶり3回目の出場、よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属)

 昨年はM-1グランプリのファイナリストにも選ばれた実力者・アキナ。今回の決勝前の予想で、私は彼らをファイナルステージ進出5組の中に挙げていた。

 アルバイトの先輩、山名の異常行動におののく後輩の秋山。その奇行の数々を聞き覚えのあるBGMでショートコント風に積み重ねていく。にゃんこスターの直後という不運極まりない出番であったが、強度のあるネタで笑いのポイントを稼ぐあたりは腕の確かさを覚えた。

 ただ見返してみると、意外と山名の奇行というかボケにムラがあったように感じた。序盤のバスケットボールを取ろうと見せかけて退場とか、まあ後輩とコミュニケーション取るためにあえてギャグ的にやったとも受け取れるんだけど、誰のかも知らない携帯に出るとかはシャレにならんからな。笑っていいのか引き笑いに持って行きたいのかよく分からないボケが続いた。最後の名字を問うくだりは「それがオチ?」と思わなくもなかったのよね。

 審査員の合計得点は432点。暫定7位。

 個人的な採点は88点。

GAG少年楽団

(決勝戦初出場、よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属)

 懐かしの爆笑オンエアバトルでは強豪の一角として活躍した彼らが、悲願のKOC決勝進出。元ネタとおぼしきあだち充「タッチ」のその後を描いたかのような三角関係のコントで勝負をかけた、のだが…。

 幼なじみの男性2人の名前を「シュン」「ジュン」と似せるなど、設定は細かい(ちなみに宮戸演じる女性の名前はヒロコ)。幼なじみのそれぞれが女子高の校長、建設会社の社長、大学病院の院長と「長」がつくいわゆる名士と呼ばれる人物であるにもかかわらず恋愛関係は一向に成長しない…というギャップも引きつけるものがあった。

 ただし後半が全く伸びなかったな。コント的な動きでシュンとジュンが追っかけっこし、ヒロコが「何で殴り合わないの~」と嘆くくだりは、明らかにスベッた感じになっていた。テレビ越しに見ている私が「あースベッたなあ~」と思ったくらいだから、会場はキンキンに冷えたのではなかろうか。後半に畳みかけていくネタじゃないと、生放送の賞レースは勝ち切りにくい。それを感じさせたGAGの初決勝だった。

 審査員の合計得点は419点。パーパーを下回り暫定9位の最下位。

 個人的な採点は86点。

ゾフィー

(決勝戦初出場、フリー)

 同じフリーのにゃんこスター(翌日にナベプロ所属となるが)とは違う意味で、ネタへの注目を集めることとなったゾフィー。ネタ前のVTRで、ボケの上田は1日8時間をネタ書きに充てていると紹介。ツッコミのサイトウはバイトから始めた職場で専務にまで出世し、金銭的に上田を支援していると聞いて「おい、マルクスエンゲルスの関係かよ」と私はひとり盛り上がってしまった。当然、ネタへの期待も高まったのだが。

 ネタの内容というか、息子役の上田が母親を「メシを作る人だよ!」と決めつけるセリフがネットの炎上を招いてしまったようだ。まああり得ることではある。かつて女性を産む機械などと誹謗中傷した閣僚がいたことを私は思い出した。

 ただし、上田演じる息子の母親に対する一連の言動は、私はそんなに責めるものでもないと思う。おそらく中学生くらいの設定だと思うが、部活をこなしてそこそこ遅い時間帯に帰ってきたら、そらあ腹は減っているし、当然あると想定していた夕食がなければ文句の一つも言いたくなるだろう。

 むしろ問題なのはサイトウ演じる父親の対応である。母親が家出したという非常事態においても、子どもが空腹を訴えているなら自分で夕食をこしらえるなり、出前を取るなり買い出しなりして食事を取らせるのが保護者としての責任であろう。

 それなのに無理に子どもを寝かせようとする、それでいて父親の自分はこっそりカップめんを食していて子どもに黙っている。揚げ句にラストでは「母さんが出て行ったの、おまえが原因かもな…」などと子どもに責任を転嫁する。

 いやあ、控えめに言ってもなかなかクズな父親だと思いますよ。客観的に見れば一番問題のある父親が一見まともな人物に描かれ、社会的な権力など一切ない子どもをことさらに異常な人物に描く。そういう点で、このコントには根本的な欠陥があったのではないかと私は思っている。当然、一部のネットで言われているような「風刺のよく効いたコント」などでは断じてないと言わせてもらう。

 あと息子が父親の食したカップめんの容器を見つけて(父親を糾弾する材料があったと)狂喜乱舞するシーンがあるが、私はてっきり未開封のカップめんがあったので「メシが食える!」と息子が喜んでいたのかと思った。ここは最初から容器を逆さにするなどしてカラをアピールするなど、芝居を分かりやすくしてほしかったところだ。このシーンで拍手笑いが起きるほど印象的な芝居だっただけにね。

 審査員の合計得点は422点。パーパーをわずか1点上回る総合8位。

 個人的な採点は85点。リアルタイムでは88点をつけたが、これはファイナルステージ進出の当落線上にいたのがジャングルポケット(90点)とアンガールズ(86点)ではなく、ジャンポケとさらば青春の光(89点)と勘違いしていたため。

 

 これにてファーストステージは終了。

 ファイナルステージ進出は、にゃんこスター(フリー)、かまいたち(よしもと)、さらば青春の光(ザ・森東)、ジャングルポケット(よしもと)、アンガールズ(ワタナベ)の5組に決定した。

 

 続きます。