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ボキャブラ世代逆襲の切り札はピコ太郎でも古坂大魔王でもねえ、プリンプリンだ!

 いささか話題に乗り遅れた感は重々承知しているが、いま「ピコ太郎」なるコミカルなミュージシャンが世界をにぎわせている。メディアでは別人と強調しているが、その正体はまごうかたなき古坂大魔王。かつて大人気を博した「ボキャブラ天国」に出演していた「底ぬけAIR-LINE」というトリオ、1人脱退してコンビのメンバーだった人物・古坂昭仁その人である。

 ピコ太郎は11月4日放送の「ミュージックステーション」に生出演し「ボキャブラ天国」の司会だったタモリと再会を果たす。本編では乃木坂46など並み居る出演者を抑えて堂々のトリとして「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」のロング・ヴァージョンを披露。ジャスティン・ビーバーをも唸らせた楽曲を日本中に響かせた。

 私はリアルタイムで視聴できなかったのだが、その時間帯にツイッターをいじっていると、少しひっかかる物言いのツイートが目に飛び込んできた。演芸評論家・菅家しのぶ氏の一言である。

  ももいろクローバーの楽曲の詩を引用する形で、私を含む「ボキャブラ世代」…指している対象は不明だが、当時の番組に出演していた芸人、視聴していた人々を指すものと解釈してよかろう…を軽くdisっているのはよく伝わってくる。これについては複数の角度から異論を唱えたくなった次第だ。

 

 まず「ボキャブラ世代」というものは、そんなに(私の印象だが)軽口を叩いてdisっていい対象なのか、という疑問が頭をもたげる。「ボキャブラ天国」は、いわゆるネタ番組と趣旨が違い、ざっくり言えばダジャレの面白さを競う番組であった。ボキャブラブームの数年後に起きたネタ番組ブームに熱狂した世代から見ると、ネタそのものを評価の物差しとしないボキャブラ芸人の当時のブレークぶりに納得行かない人がいたとしても、それは不思議ではないだろう。

 しかし改めて、ボキャブラ天国でブレークした芸人の顔触れを見てほしい。爆笑問題ネプチューンくりぃむしちゅー(当時海砂利水魚)、土田晃之(元UーTurn)、東貴博(Take2)と、今やテレビバラエティーに欠かせない人物を多く輩出しているではないか。

 彼ら以外にも、オバマ米大統領のそっくりさんネタで再ブレークを果たしたノッチ(デンジャラス)や、今年のR-1ぐらんぷりでぶっちぎりの優勝を果たしたハリウッドザコシショウ(元G★MENS)もいる。彼らなど、今日に至るまでお笑い界に人材を絶えなく供給するほど多士済々なのが「ボキャブラ世代」の地力であり、このたびピコ太郎(古坂大魔王)もその末席に加わったといえないだろうか。さすがにギネス認定されるまでのブレークは予想できなかったけども。

 

 そして改めて私が強調しておきたいのは、ボキャブラ世代の「逆襲」が、今回のピコ太郎のブレークで打ち止めとは決してならないだろうということである。先ほどまで書いた内容とも重なるが、ボキャブラ世代の逆襲というものは、今回のピコ太郎のように余興のような音楽ネタで評価を得るのでなく、まさに演芸ネタそのもので圧倒的な評価…いわゆる賞レース優勝など…を得て完結するものだと思っている。

 その重大な役割を担うのはどの芸人になるのか。私が推すのはプリンプリン、田中章とうな加藤のコントコンビである。

 彼らを推すのには理由がある。「ボキャブラ天国」出演当時の彼らは歴史上の偉人を題材にした時代劇を取り入れたネタで番組に新風を吹き込み、中心選手となっていった。ちなみにボケ役の田中は当時交際していた女性にプロポーズした際、「座布団取ったら(番組で1位になったら)結婚してあげる」と言われ、見事に公約を実現した逸話がある。

 そんな彼らが「ボキャブラ天国」終了から17年たった現在、深夜番組「ぷっすま」(朝日系)に出演し、ネタを披露する絶好の機会を得た。満を持して繰り出したネタは、NHK新人演芸大賞を獲得した出世作である幼児番組ネタ。うな加藤演じるお兄さんの呼びかけを田中がことごとく甲高い声で破壊するシンプルなコントは、2chの実況板で高い評価を呼んだ。番組後半でリクエストされた新ネタでも、ショートコントであったが湖に斧を落としたきこり(加藤)に対し「ロマン輝くエステールの…」と田中演じる湖の精が首輪をあげようとするくだりなどは、しっかりと実況板で評価されていた。

 そういう意味では、プリンプリンはまだ日本一のコントレース「キングオブコント」で評価される可能性を残していると言えよう。ショートコントでなく、きっちり4分の新作コントを完成させれば来年のキングオブコントの台風の目になるのではないか。

 ボキャブラ時代を知らず、ネタブーム世代でネタを見る目の肥えたお笑い通に「ボキャブラ世代ここにあり」とアピールできるのは、ピコ太郎(古坂大魔王)でなくプリンプリンだと私は確信している。来年のことを話すと鬼が笑うというが、一向に構わない。2017年お笑い界台風の目は、ボキャブラ世代のプリンプリンだ!そう今年から断言させていただく。