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キングオブコント2016決勝戦感想その8

☆ファイナルステージ

【ライス】

 終わってみれば初出場初優勝を決めた記念すべき喫茶店コントとなったが、構成的にかなり賭けだったんじゃないのかなあ。何しろ関町のズボンビチャビチャ、あの理由は引くか爆発するかどっちかだろ。しかしふたを開ければこの決勝戦イチの爆発的な笑いが起こったのだから、ライスは見事賭けに勝ったと言えるのではないか。

 序盤で爆発するというネタの構成上、よほど展開をうまくやらなければ右肩下がりで竜頭蛇尾(りゅうとうだび)という結末も危惧した。しかし関町が股間を押し付けたテーブルを手際良く雑巾で拭いていく店員役の田所のとぼけた演技など、4分間という規定の時間をうまく逆算したようにギャグをちりばめていた。

 さすが同期のしずるのライバルと長年目されてきただけあって、ライスのコントのクオリティーの高さを認識できる作品だったと思う。ただし、序盤に匹敵するほどの爆発は後半に見られなかった点で、ネタ終了直後はそんなに点数が伸びると思わなかった。個人的に、かまいたち(456点)とタイムマシーン3号(448点)の間くらいの得点を予想していた。

 審査員の得点は470点。1stとの合計では936点をたたき出し、トップに躍り出た。

 私の採点は91点。

 

ジャングルポケット

 長年連れ添ったであろう妻(太田)の付き添いのもと、担当医(おたけ)から聞かされた斉藤老人の余命は3分。人間の寿命をテーマにした演芸作品といえば落語の「死神」を思い起こす。決して目新しいテーマではないが、4分という規定時間を十二分に生かした設定で、狙いは悪くなかった。

 加えて、冒頭の担当医に病状を聞く前に妻へ不安げな表情を見せ、弱気な発言を呟く斉藤の演技が非常にシリアスで良かった。さすが文学座に入団して俳優を志しただけある。この演技でコントの空気を引き締め、直後の「余命3分」の展開へスムーズにつなげることができた。

 短すぎる余命を聞かされた斉藤老人は、妻とかつて楽しんだドライブや富士山登山をその場で追体験する。いちいちETCの踏切とか山彦とか参加してくるおたけ医師に、少しイラッとしつつ笑わされる。

 終盤まではいい調子で来たと思うが、残り1分を切ったあたりから「やることが思いつかない」と行き詰まってからが少し失速したかな。急に斉藤が踊り出すというのは展開の選択として悪くはなかったが、やはり間延びした印象は否めなかった。それでもオチは一ひねりあって、個人的にはライスより僅差で上を行くかな、という印象だった。

 結果発表の間、(遅咲きのライスに優勝してほしいけど、ジャンポケが行くかな…)と考え、結末が読めずにいた。この手の賞レースで、ここまで結果が予想できない大会もめったにないかもしれない。

 果たして、審査員の得点は464点。1stとの合計は930点。

 1stラウンドで同点だったライスと6点の差がつけられ、ライスの初出場初優勝に決まった。

 ちなみに私の採点は92点。

 私の採点傾向を等号不等号で表すなら、以下にこの通りになる。

 ライス1本目(94点)>かまいたち2本目=ジャンポケ1本目(93点)>ジャンポケ2本目(92点)>ライス2本目=かまいたち1本目(91点)>タイマ2本目=タイマ1本目=かもめんたる1本目(90点)>かもめんたる2本目=しずる=ななまがり=だーりんず(89点)>ラブレターズジグザグジギー(88点)

 こうして並べてみると、1stラウンド敗退組は相対的に低評価だったんだな。

 ようやく決勝戦の全ネタレビュー終わりましたが、次回は今大会非常に取りざたされた「観客のリアクション」について書こうと思います。