「さんまのお笑い向上委員会」(フジ系4月23日放送分)
ハリウッドザコシショウ、永野に続く飛び道具系芸人として登場したRG。彼のポテンシャルの高さに唸らされた回だった。
彼の持ちネタである「あるある言いたい」は、個人的にはあまり評価してこなかったのだが、30年以上テレビ演芸界のトップを張り続けているお笑い怪獣・明石家さんまの前では気合が違ったのだろう。新鮮な驚きがいくつかあった。
まずリサーチ力の高さ。リサーチと言っても何のことやら、と皆さんは思うだろうが、RGが向上委員会側の皆勤賞・土田晃之に向かって「土田さんの好きな浜田省吾で、あるある言いたいやります」と切り出したときは「ほう」と思わされた。
なぜかと言うと、もう20年近くも昔になる「ボキャブラ天国」に土田がコンビ「Uーturn」で出ていたころをやにわに思い出したからである。
ランキング形式で次々と芸人が出演する同番組では、出演前のナレーションでコンビのプロフィールが毎週紹介された。そのナレーションで、土田が「カラオケでは浜田省吾を歌って周囲をよく引かせている」と暴露した回が確かにあった。
RGの発言で、まさに約20年の時を経て土田が浜田省吾ファンだったことを私は思い出したのである。こうした機会がなければ一生思い出さなかったような事柄を記憶の奥底から蘇らせたという点で、RGのリサーチ能力の高さに驚きを禁じ得なかった。
もう一つRGに驚かされたのは、その臨機応変ぶりである。
RGは芸人界の誇る自由人、ネプチューン・堀内健にも臆することなく立ち向かい、「堀内さんの好きなフット・ルースに乗せてあるあるを…」と切り出す。ここで堀内は無慈悲にも「フラッシュダンスの方がいいなー」と返したのである。
ホリケン後輩に容赦ねえなー、と私はテレビの前で思った。しかしRGは取り乱すことなく(映像的には少し編集があったようだが)、置いたいすを中心に堀内とぐるぐる回りながら「フラッシュダンス」のメロディーを口ずさみ、「あるある言いたい」ネタを始めるのだった。この辺の柔軟性には、古い表現で恐縮だが目からうろこが落ちる思いがした。
「あるある言いたい」はともかく長尺のフォーマットで成り立たせる芸のため、長い間私はRGを「融通の利かないテンプレ芸人」と失礼ながら見ていた。しかし今回、お笑い怪獣が取り仕切る、どこから弾丸が飛んでくるか分からない「向上委員会」と言う名の戦場において、RGが芸人としての伸びしろを見せてくれたのは、上から目線を承知で書くがうれしい誤算であった。
RGもこの大舞台に期するものがあって、テンションが上がっていたのだろう。学生プロレス出身という経験を生かしてムーンサルトプレスという大技まで披露(結果腹打ちして悶絶していたが)してくれたところに、芸人としての並々ならぬ気概を感じた。私の直感であるが、早晩RGは向上委員会側のひな壇に座る気がしてならない。
一方で番組に対して苦言を少なからず呈しておきたいのが、恒例と化した「閉店ガラガラ」オーディション。結果として新宿カウボーイ・かねきよの2連覇となった。
まあオチとしてみればありっちゃありかな、とは思うのだが、これでかねきよの評価が上がってジョニ男のようにしれっとひな壇入り、という展開は避けてもらいたい。はっきり言って、かねきよにひな壇は荷が重いと今から警告させていただく。