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すぐれた風刺! サンドウィッチマン伊達の安倍首相ものまね

 5月16日放送の「アメトーーク!! サンドウィッチマン大好き芸人」(朝日系)でサンドウィッチマン伊達みきおが披露した安倍晋三首相のものまねが、ネット上で大絶賛を呼んでいる。twitterでものまね部分を抜粋した動画を見たが、思わずなるほどとうならされた。

 

 ネタは非常にシンプル。伊達が国会答弁風に共演者の質問に答える。安倍の甲高い声、やたら多い句読点、そして早口を忠実にコピーしつつ

 

「先ほど、私、アメリカの、トランプ、大統領と、電話で、会談しました。内容は、確実に、一致、しました」

 

 基本的にこれの繰り返しであるw 中川家礼二らが「新元号が発表されましたけど…」「景気回復については…」と質問するが、伊達は「しかし、ですね」とこれも安倍首相が脈絡なく用いる接続詞を取り入れて同様の回答をするというね。

 動画を見た人は分かると思うが、この伊達の安倍ものまねは質問を重ねるごとに観覧者の笑いが増幅している。単に似ているだけなら(確かに声色が非常に似ている)こうはならない。共演者の質問がエスカレートすればするほど、このものまねは破壊力が倍加すると私は見ている。「阪神は優勝しますか?」「金貸してください」とかね。そういう意味では、もっと長く見たかったくだりではある。

 

 この伊達の安倍ものまねのくだりで、興味深いやりとりがある。司会の雨上がり決死隊宮迫博之「すぐトランプに電話する」とツッコむと、伊達はこう返す。

「電話で会談するんですよ、必ず」

 この伊達の回答には非常に感心した。実際に安倍は、何かといえばトランプ大統領にすぐ電話して信頼関係をアピールしているからである。

 

 日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」2018年9月28日付では「対米屈従外交 歯止めなし」と題した特集記事が組まれた。当時行われた日米首脳会談を取り上げたものだが、この特集で西村康稔官房副長官のコメントを紹介している。

「今回が8回目の首脳会談、電話会談は26回やっている」

 こうした発言に代表されるように、安倍内閣は安倍首相とトランプ大統領の個人的な親密さをマスコミに繰り返し宣伝している。この手の閣僚発言に乗っかったちょうちん報道が、今回の伊達の安倍ものまねの元ネタではないかと私は勝手に想像する。

 

 そうした安倍とトランプの「親密さ」を下敷きにしたであろうから、伊達のものまねは面白い。結局は安倍がトランプとの電話会談を頻繁にしたり、会えばゴルフをやったりした結果、米国の農産物の関税引き下げとか、F35戦闘機はじめ武器の浪費的爆買いとか日本国民に負担ばかり募るような交渉を受け入れているからだ。

 そうした「米国いいなり」の安倍政権の姿勢を「アメトーーク!!」観覧者も薄々気づいており、だからこそ伊達の安倍ものまねが繰り返されるほど爆笑になっていったのではないか。まさに「共感の笑い」である。

 

 サンドウィッチマンの漫才で「犬の散歩」というネタがある。このネタを書き起こししたサイトによると、伊達は「ザ・ニュースペーパーか!」とツッコんでいるらしい。

 ザ・ニュースペーパーと言えば、その時々の話題になった政治家に扮する風刺コントを行ってこの道30年といういわくつきの集団である。実際の交流があるかは知らないが、伊達の安倍ものまねはザ・ニュースペーパーへのリスペクトが込められていると俺は思うんだが、どうかね。

 

 さて世間では、かわぐちかいじ原作の実写映画「空母いぶき」出演の佐藤浩市が話題となっている。佐藤が演じる首相について、自身の提案でおなかが弱い設定にしたら「安倍首相を揶揄(やゆ)している!」と炎上した件だ。この件については別の拙ブログで取り上げたので。そちらを見てほしい。

 佐藤の件もあって、ネットで伊達の安倍ものまねをどうみるか注視していたが、放送後1日たっても炎上する気配はみじんもない。佐藤を炎上させた連中が伊達の所業を知らぬはずはない。明らかにダンマリしていると思う。

 

 理由はいろいろ考えられる。一つは佐藤を叩いたノリで伊達を叩いても何のメリットもないこと。何しろサンドは、今や明石家さんまを押しのけて好感度タレント1位である。架空の人物である首相に設定を加えた佐藤より、実在する安倍首相を徹底して「トランプ言いなりの無能」に描いた伊達の方がよほど炎上案件だと思うが、かみついても無様な負け戦になると思った人が多いのかな。

 もう一つの考えられる理由は「サンドを叩くよりも政治利用した方がはるかにメリットが大きい」ということ。そうした親玉の意図をくみ取って、佐藤を炎上させた連中…圧倒的多数が安倍政権支持であろう…も伊達を叩かないというか。

 先日も安倍首相は、ジャニーズ事務所所属のTOKIOと会食し、その事実をマスコミに書かせている。今回の伊達のものまねも、向こうからものまねをしてくれたのを幸いに接触を図るのではないか。過去に安倍首相は、時事ネタを得意とする爆笑問題を自身の「桜を見る会」に呼び懐柔したからね(※)。ましてサンドは今をときめく好感度1位タレントなわけだし。

 

 そういうわけで、私としてはサンド伊達の安倍ものまねに惜しみなく称賛を送る一方、なき祖父の悲願であった改憲に執念を燃やす安倍晋三のなりふり構わぬ政治利用にサンドが巻き込まれないよう警鐘を鳴らしたい。2カ月後は参院選、かつ衆参ダブル選挙も可能性が高いと言われているからね。

 

(※)ちなみにサンドの2人も過去の「桜を見る会」に呼ばれ、安倍首相の両脇に伊達と富澤の2人が収まったショットが報道されている。もっともサンドが好感度1位に収まる前の話だが。だからこそ安倍が改めてサンドにすり寄る可能性も高い。