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「パタリロ!」「一休さん」夢のコラボー藤田淑子さんをしのぶ

 年の瀬の訃報に驚いている。声優の藤田淑子さんが亡くなった。68歳。

 私にとって藤田さんと言えば、というか同年代の人間にとってはやはりアニメ「一休さん」であろう。本放送は私が生まれて間もなくから、小学低学年の頃まで約7年間続いた。

 それから間もなく私の住む地域では再放送が平日の夕方に毎日流れたので、個人的には再放送の方を熱心に見ていた記憶がある。面白くてためになる「一休さん」は、私の小学時代の成長の下支えをしたといっても過言ではない。その結果、こんな人間になったのかというツッコミはなしでお願いします。

 また藤田さんの代表的な役柄の一つと言えば「パタリロ!」(アニメ版は途中から「ぼくパタリロ!」と改題)のマライヒである。原作を知らずにアニメを見ていた私は、当初マライヒという登場人物を女性だと思っていた。

 wikipediaを見ていると、制作サイドは意図的に視聴者がマライヒを女性と思うような声色を求めていたという。藤田さんも最初は少年の声を試したそうだが、結局は女性的な声色に落ち着いたとか。つまり私がマライヒを女性だと思い込んでいたのは、制作サイドおよび藤田さんの思惑通りだったわけだ。声優の底力を感じる。

 藤田さんで忘れるわけにいかないのが、「パタリロ!」で何と一休さんを演じたことだろう。いわゆるマライヒとの1人2役である。

 確かパタリロがマライヒと会話しているシーンだったと思うが、パタリロ(声:白石冬美さん)が一休さんの橋の逸話を持ち出す。イメージシーンで、橋の前に「このはし わたるべからず」との注意書きが映り、そこへ登場したのが一休さん。ルックスは魔夜峰央の描く一休さんというふうに美少年のデザインが施されていた。

 注意書きを見たイケメン一休さんは「かーんたんです!はし(端)じゃなくて、真ん中を渡ればいいんですよ!!」と笑う。そのセリフのトーンは紛れもなく本家本元(と言ってよいのかとも思うが)の一休さんのそれであった。当時は「すげえ、さすが藤田さんだ」と感心した覚えがある。当たり前のことなのに。

 しかし話はここから。意気揚々と橋の真ん中を渡り始めたパタリロ一休さんだったが、「バキィッ」と音を立てて橋が割れてしまう。直後に一休さんの草履がプカプカと川に浮かぶカットが描かれ、そこにパタリロの「その後、一休さんの姿を見た者はないという…」というナレーションがかぶさるというね。

 いやー、笑いましたよ。うちの姉なんかはパタリロの口まねしていましたから。

 あ、パタリロじゃなくて藤田さんの話か。いやもう、藤田さんがいなければ「一休さん」と「パタリロ!」の夢のコラボによる爆笑シーンは成り立ち得なかったわけで。たぶん藤田さんの訃報に際して、私のようにこの場面を思い出した人は多いんじゃないかなと思う。

 もちろんほかにも「キャッツ・アイ」の泪姉とかキテレツとか、近年動画サイトで私が見返している「どろろ」のオープニングとか、藤田さんの残した業績は計り知れない。それだけに、やはり68歳での死去は早くて、残念というほかはない。

 藤田淑子さんのご冥福を祈ります。お疲れさまでした。