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「ちびまる子ちゃん」の異色名作「男子対女子大戦争」原作を読みアニメを見る

 「ちびまる子ちゃん」作者のさくらももこさんが死去してもう2カ月になる。書店にはさくらさんが生前に残した作品群がずらりと並ぶので(死去直後はかなり売り切れて品薄状態だった)、このところ書店に寄るたんびに『ちびまる子ちゃん』の単行本(集英社りぼんマスコットコミックス)を3冊ほど買って読んでいる状況である。

 まあ私は高校時代がまる子ブームのさなかだったので、単行本の8巻まではリアルタイムで読んだ記憶がある。しかしまあ、改めて読んでも「ちびまる子ちゃん」は面白い。そこで今回は同作品においても異色の存在感を発揮した名作で第7巻に収録した「男子対女子大戦争」の回をレビューしたい。

 「ちびまる子ちゃん」は今さら言うまでもなく作者であるさくらももこさんの小学生時代を振り返ったエッセー漫画であり、その性格上当時の世相が少なからず盛り込まれているのだが、この「男子対女子大戦争」はとりわけ社会性の高いテーマである。何しろ当時大流行した「仮面ライダー」のタイアップで売り出されたお菓子「仮面ライダースナック」の付録であるカードが目当ての人々が「本体」であるお菓子を食べずに捨てていたという実際に起きていた問題を、まる子が学級会で告発するという内容なのだから。まる子の告発によりクラスの数人の男子が謝罪するはめになり、彼らからまる子ら女子が逆恨みされるという展開である。

 この回は、原作では第7巻という中盤で描かれたにもかかわらず、アニメでは開始した年である1990年の11月には既に放送されている。それだけ原作の反響が大きかったのかもしれない。

 今回動画サイトでアニメ「男子対女子大戦争」の回を初めて視聴したが、原作の持ち味を忠実に生かした上でアニメならではの演出も非常に凝っている。見応えのある回だというのが伝わってくる。

www.youtube.com

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 この「男子対女子大戦争」の回はアニメで30分間フルに放送しているが、いわゆるアニメオリジナルで膨らませたエピソードはほとんどない。それだけ原作のエピソードが濃いと言えるが、その分女子の味方をする丸尾くんの演出に力を注いだ感もある。

 何しろこの回の丸尾くんは面白い。女子の味方をしたことで「ズバリ女にもてたいでしょう」と煽られてキレる丸尾くん、戦争開始で「うおーっ、たああっ」とヘレンケラーばりの絶叫をしながら奮闘する丸尾くんの姿の描写はアニメでいい感じに膨らませている。思わず俺もキャプチャー画像を以下のように保存したくらいだ。

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(いずれもちびまる子ちゃんアニメ「男子対女子大戦争」から)

 アニメのこの回で原作にない描写は、「戦争」の終盤で女子の石灰玉攻撃に対抗する男子の「つば攻撃」くらいである。そこへ原作通りにまる子が、男子の大将格中島の掘った落とし穴でたまちゃんがケガしたことを報告し、戦争は終了する。

 しかしこの回は、男子対女子の戦争が終わってからがクライマックスである。男子がライダースナックを捨てるのを告発したまる子自身が、仮面ライダー2号である一文字隼人(佐々木剛)のファンだったという歴史的事実が発覚するのだ。

 この一文字隼人に対するまる子のラブコールが、原作からして強烈である。何つっても「最初はブタみたいな顔だと思ったけどだんだん好きになっちゃったんだよな」だぜ? しかもこの原作のセリフはアニメでもそのまま使っているというね。「ちびまる子ちゃん」のアニメはブーム時で最高視聴率39%をたたき出すほどのお化け番組であり、当然この回の話題は当の2号ライダー(一文字隼人)である佐々木剛さんに伝わっていたのではと思うが…。

 まあ、今回取り上げた「男子対女子大戦争」は形を変えた「仮面ライダーちびまる子ちゃん」という国民的2大コンテンツのタイアップ回と言えないこともないわけで、ぜひとも多くの人々に原作とアニメをあわせて堪能していただきたい次第である。