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「THE W」決勝戦感想その3

◆ファーストラウンド

第4試合

まとばゆう(フリー)×押しだしましょう子(フリー)

 事務所に所属していないフリー芸人同士の対決。と言っても、まとばはR-12015覇者じゅんいちダビットソンのいるアミーパークに所属した経歴を持つが、押しだしまは鳥取市役所職員が本業というゴリゴリのアマチュア芸人。大会前から「にゃんこスター」枠的な注目を受けていた出色のファイナリストである。

 先攻のまとばは、自信作と思われるネタを投入。「♪手短に~」というキャッチーなジングルを使い、洋画やテレビドラマ、アニメの名作をその主題歌のメロディーに乗せて紹介した。

 4分の持ち時間で、数えてみると実に14本の作品を紹介し、かつ「手短に」毒を混ぜながら軽快に笑いのポイントを稼いでいく。特に面白かったのは「うる星やつら」での「♪すべては男子の妄想」だ。

 聴いていた人は「おいおい、『うる星やつら』は女性である高橋留美子先生の作だろう」と一瞬戸惑ったであろう。しかし、この歴史的な漫画、そしてアニメが世間に発信されたことで、現在の美少女ゲームの「さえない男子の前に美少女がぞろぞろ出てきて求愛する」てな基本設定が形作られたとはいえないだろうかwまとばはさらりとキーボードを弾きながら歌いこなしているが、なかなかに複雑で高度なギャグだと思った。

 個人的な採点は91点。

 後攻は押しだしま。準決勝において、歴戦の勇者おかずクラブを驚愕(きょうがく)させた彼女のネタは「ちゃんこ鍋の具材をトーナメントで決める」というものだった。

 正直言って、予選の段階でこのネタを彼女がやっていると聞いたとき、すげえツボに来たwこういう架空の遊びをそのままピン芸のネタにしてしまうというのは、ある意味今年のM-1でジャンルジャルがやった校内放送のネタとやっていることが近い。しかも押しだしまの場合、架空のゲームの題材が「ちゃんこ鍋の具材」である。この発想、今大会の「THE W」においては屈指のアイデア力とは言えないだろうか。

 ふたを開けてみれば、アマチュアなりのネタの詰めの甘さを感じた。準決勝(押しだしまは準々決勝と誤っていたが)を雑に省略したのはもったいなかったし、決勝の豚×蟹ももう少し対戦に見せ場が欲しかったところだ。ただ優勝の決め方の投げっ放しぶりを含め、何だか票を投じてしまいたくなる危うい魅力に満ちたネタをアマチュアの彼女はやり切ったと思う。

 個人的な採点は92点。

 審査員401人の投票結果は、まとば286票×押しだしま115票。まとばがキャリアでの一日の長を見せつける形で快勝した。しかしタレント審査員の新川優愛は、押しだしまのネタ後は涙を流して笑うほど彼女のネタにツボッてしまっていた。その光景が自然に受け入れられるほど、押しだしまのネタも爪痕を確実に残したと思った。

 

 続きます。