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キングオブコント2017決勝戦の感想その6

◆ファイナルステージ

さらば青春の光

 これまで何回もテレビ番組で披露したことのあるパワースポットのコント。そういうハンディをものともせず、終わってみれば審査員席のバナナマン設楽から「このネタ欲しい、買いたい」と最大級の賛辞を送られた。

 確かに面白い。警備員の森田と観光客の東ブクロのゆったりしたテンポで、しかしながら確実に笑いを稼ぐ「パワースポットですよね!?」「そうですねー」のやりとりが見せてくれる。

 東ブクロに身の上話をするうちに自身の不幸な半生を痛感し、触れてはいけないはずの岩に寄りかかって泣き崩れる森田警備員。そのハイテンションな泣き芸は大御所の志村けんを彷彿(ほうふつ)とさせる…とは言いすぎか。今回の森田のように、キングオブコント決勝で号泣のシーンを見せる作品をやった組は今までなかった記憶なのだが、どうか。4分の持ち時間では、号泣のシーンは笑いを取るのにリスク高そうだもんな。

 オチは過去のテレビで披露したのとは改変してきた。ただオチへのためをつくりすぎて結末は予想できた。そのオチも少し首をひねる出来かな。高名な舞台監督が主宰する劇場の警備員なら、少なくともパワースポットの警備よりは待遇良さそうだし。森田いわくパワースポットの警備は1日8時間勤務で日当6300円とのことで、これは最低賃金を下回る報酬である。

 審査員の合計得点は467点。1stとの合計は922点で暫定トップ。

 個人的な採点は90点。

 

かまいたち

 試着したウエットスーツがきつくて脱げず、客と店員が四苦八苦するシンプルなコント。客役の山内のツッコミワードと演技力がさえる。脱ぐ途中のポーズがスパイダーマンみたいだと自嘲気味に笑う山内、つられて笑う店員の濱家…そこへ「おまえは笑うなよ!」と山内の怒りツッコミが炸裂する。このへんギャグ漫画ぽくて笑えるわ。

 1本目同様、このコントもちょっとした2部構成といえる。脱げなくて四苦八苦している様子を1部とすれば、首の部分が脱げて山内いわく「めどが立った」状態になってからが2部だ。ここからは濱家が暴走。長身のリーチを生かしてしゃちほこ状態の山内を痛めつける。ひざの皿を気にする山内の冷静なツッコミが笑いに加速を与える。

 しかしここまでシンプルな内容だと、もっと濱家には暴れてほしかったところだ。ドリフの借金取りのコントみたいに、ウエットスーツを脱がせるのとは無関係に山内をぶん投げるとか、さらなるドタバタを期待してしまった。

 審査員の合計得点は、今大会最高となる478点。1stとの合計は942点で、暫定1位に躍り出た。

 個人的な採点は91点。

 

にゃんこスター

 そして大会は大詰め、台風の目と化したにゃんこスターがフリー(大会翌日にワタナベエンターテインメントに加入)として初のコントキングとなるか注目された。

 ネタはフラフープ。縄跳びと同様の口上を絶叫するスーパー3助の姿に会場は沸き返る。これって冷静に考えたらスゴい話だな。

 ネタの構成、展開は縄跳びとほぼ同じ。アンゴラ村長のリズムフラフープは、自身がインストラクター資格を持つ縄跳びと比べるとキレが落ちる。選曲もやはり大塚愛の「さくらんぼ」でそろえてほしかったところだ。

 とはいえ「フラフープの神様」と呼ばれるでかい置物が出てきて、しまいには両手を出して踊りだす一連の流れはほほえましさも手伝って笑ってしまった。手と一緒に両足も出る仕掛けにすればよかったのにとも思ったけど。

 審査員の合計得点は462点。1stから若干得点を落とし、2作品の合計は928点。この瞬間、かまいたちの初優勝が決まった。

 個人的な採点は88点。ただテレビの審査員5人は全員90点台をつけていた。ほぼ構成が同じで、時間をさほど置かずに見たネタでも笑いが取れていたという点が評価されて、そうした採点になったのかもと思ったり思わなかったりする。

 

 終わってみれば超ド級のダークホース・にゃんこスターが優勝戦線を存分に引っかき回し、実力派のかまいたちさらば青春の光ジャングルポケットが地力を見せつけたなど収穫の多い大会であった。視聴率は9.7%にとどまったが、大会後の反響の大きさは近年にないレベルであろう。

 ジャンポケの太田は、優勝を逃したあまりの悔しさに打ち上げ会場でじんましんを発症し、病院へ直行したと伝えられている。そうした話を聞くにつけ、伊集院光のコメントではないが、彗星の如く現れたにゃんこスターの活躍が、お笑いの新しい局面を否応なく切り開く「地殻変動」が起きていることを感じてしまう。

 今年も残り3カ月弱。年末年始に向け、しばらくテレビ界隈はにゃんこスターの快進撃が続くであろうが、来年の大会を見据えて既に芸人たちはコントの腕を磨いているであろう。鬼が笑うどころの話ではないが、今から来年のキングオブコント2018が楽しみな私である。