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キングオブコント2017決勝戦の感想その2

◆ファーストステージ

アンガールズ

(決勝戦初出場、ワタナベエンターテインメント所属)

 かつて「キモカワ芸人」の異名を取り、「ジャンガジャンガ」という謎のジングルを武器に2000年代前半のお笑いブームの中核を担ったベテランが、満を持してKOCのファイナリストに名乗りを挙げた。ネタ前のVTRで20代とおぼしき過去の彼らの「ジャンガジャンガ」している映像が流れたが、いやー細えなw

 そんな彼らが夢舞台のファーストラウンドでかけたのは海でのナンパネタ。これは年末年始でよく披露した作品のようだが、幸いなことに私は初見であった。

 海でのナンパが不首尾に終わった田中と山根。上半身裸の彼らの2ショット、ネタ前のVTRと比べるといくぶんぜい肉がついてだらしない感じになっているビジュアルに、時の流れを感じた。

 ネタそのものは、もともとはもっと長尺だった作品を4分に収めた感があって、これから盛り上がるぞと思ったところで終わってしまった印象が残った。ただネタ中、すごく共感を覚えたシーンがあった。

 ナンパに失敗して帰宅しようとした2人だが、田中は運悪く自身のバッグ-財布などの貴重品も当然入っていた-が盗難に遭ってしまう。当初はノーダメージを装った田中だったが、感情の堤防が決壊してしまい山根にすがりついて「悔しいよ~!」と号泣する。そんな田中を山根は戸惑いつつも「そうかそうか、強がっていたんだな…」と優しく受け止めるのであった。

 個人的に、このくだりは今大会の決勝で最も印象深いシーンだったりする。40歳をすぎたおじさんにもなると、悔しいことや悲しいことがあってもその感情をぶつける相手はどこにもいないものだ。ドラえもんも「おとなってかわいそうだね。自分より大きな人がいないもの」とてんとう虫コミックス16巻でおっしゃっているw

 そういう意味で、先ほど書いた田中の号泣シーンは心に残ったし、コンビ歴18年の積み上げのなせる業で生み出した名シーンだと思っている。山根はイクメンタレントとしても活動しているせいか、あんな頼りない体型(失礼)でも包容力があるなと感じた。

 審査員の合計得点は452点。ジャングルポケットと同点で、暫定2位タイに。

 個人的な採点は86点。結構褒めておいてこれまでの最低点数をつけたというねw

 

パーパー

(決勝戦初出場、マセキ芸能者所属)

 KOC開催10回目にして初めて決勝戦に進出した男女コンビの1組目が、ファーストステージ前半最後に登場。甲高い声のツッコミが特徴的なほしのディスコと、無表情で辛辣にボケる山田愛奈のコンビで注目を集めていた若手だったが、結果から言えばほろ苦い決勝戦となった。

 ネタ前のVTR、決意表明のシーンを含めてほしのは一言もセリフを発さなかった。これは2015年優勝のコロコロチキチキペッパーズナダル(およびツッコミでネタ書き担当の西野)が取っていた手法だ。ただしこの試みは不発。卒業式を舞台に、ほしのは制服の第2ボタンを誰にももらわれず友人と愚痴をこぼすのだが、その甲高い声には特に笑いは起きず。ここからほしのおよびパーパーは、いばらの道を歩むことになる。

 後輩の女子・山田が現れ、ほしのと2人きりのシチュエーションに。勘違いしたほしのは「取りそろえております」などと独特なワードセンスを見せてくるが、ここでも笑いは起きず。いくら若い女性の観客の多い会場とはいえ、KOC決勝でここまで笑いの起きないネタも珍しい。ほしののキャラが認知されていなかったのが大きいだろう。この点はアンガールズ田中とは天地の差を感じた。

 ネタをこなしながらそのドツボのはまりっぷりを感じたのか、ほしのは盛大なセリフの噛みをやらかしてしまう。悪いことには悪いことが重なるものだ。最後のセリフ「頭のおかしい人でしたね」も到底笑えるものではなく、いいところを探すのが困難なネタだった。

 審査員の合計得点は422点。これまでの最下位。

 個人的な採点は84点。

 

さらば青春の光

(決勝戦2年ぶり5回目の出場、ザ・森東所属)

 ミスターKOCとも言うべきコント師、悲願の初優勝へ2年ぶりのファイナリストに。居酒屋で晩酌を楽しんでいた森田の食卓に、店員の東ブクロ(この芸名しっくり来ねえなw)が頼んでいなかった鉄板餃子を持ってくる。森田は頼んでいないと指摘して東ブクロはその場を後にするが、ここで森田のつぶやく「うまそうやったな…」のセリフが秀逸。この後、森田の食卓に「間違って」運ばれてくる出し巻き卵やエビマヨネーズが、サンプルだろうにおいしそうに見えて来るから不思議だ。森田のオーダーを期待して後ろをゆっくり歩く東ブクロの姿に拍手笑いが起きた時点で、ファイナルステージ進出を確信した次第だ。うまいネタだと思う。

 ただコントの肝をなす「森田の食卓を経由したメニューが、他の客にもどんどん頼まれていく」というくだりには少々ひっかかりを覚えたかな。チェーン店とか大規模な居酒屋になると席を仕切っているし、同じメニューが気になって自分も頼むという連鎖反応は起きにくいのでは…などとよけいなことを考えてしまった。冒頭の森田の「うまそうやったな…」のセリフが心こもっていた分、ちょっとね。

 審査員の合計得点は455点。かまいたちに次ぐ暫定2位につける。

 個人的な採点は89点。

 

 続きます。