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しんぶん赤旗日曜版5月21日号「ひと」に芥川賞作家又吉直樹!

 5月19日に現代の治安維持法との悪名高い「共謀罪」法案が自公維新の卑劣な策動により衆院の法務委員会で強行採決されてしまい、落胆の思いを抱いた市民の方々は多いことだろう。しかし捨てる神あれば拾う神あり…ではないが、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗日曜版」の名物コーナーであるインタビュー記事「ひと」に、お笑いコンビ「ピース」のボケ担当であり頭脳、そしてご存じ小説「火花」で芥川賞を受賞した又吉直樹氏が登場した。記事は金子徹記者、写真撮影は野間あきら記者。

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(「しんぶん赤旗日曜版」5月21日号36面から)

 インタビューのテーマは、もちろん芥川賞受賞後初の創作であり、単行本初版は異例の30万部を刷り下ろした「劇場」についてです。この作品の主人公は売れない劇作家。インタビュー中、又吉氏は「格闘家でもサッカー選手でもよかったんでしょうが(笑い)、いま書きたかったのが劇作家でした」と語っています。

 誠実な受け答えの又吉氏ですからその発言は本音ではありましょうが、私のようなひねくれたお笑い好きは5年ほど昔、彼が出演した「アメトーーク!」の「男子校芸人」のことを思い出していました。ちなみにこの「男子校芸人」の回は深夜にもかかわらず視聴率16.2%をたたき出し、いまだ通常放送での同番組の歴代最高視聴率をマークしています。

 大阪府の高校選抜に選ばれるほど実力派のサッカー少年だった又吉氏は、男子校の北陽高校(現・関西大北陽高校)で青春を過ごしました。「男子校芸人」で又吉氏自身が語ったことですが、彼は学校の予餞(よせん)会で披露するクラスの演劇作品の脚本を担当したといいます。

 引っ込み思案な又吉氏は匿名で劇の作品を提出します。喜劇的なその作品は予餞会の場で大ウケ。肩の荷が下り、舞台袖でホッとしていた又吉氏に、級友で唯一彼の執筆を知っていたクワハラくんがクラスの同級生に呼びかけたのです。

「この劇は又吉が書いたんだ!」

 事実を知った級友たちは温かい拍手を又吉氏に送ったとのことで、又吉氏本人も感慨深い出来事として番組で語っていたことを思い出します。少し長い説明になりましたが、こんな思い出を持っていたからこそ、又吉氏は劇作家を主人公にした小説を世に送り出したかったのではないか…何の確証も得ているわけではありませんが、ふと私はそんなことを「しんぶん赤旗日曜版」のインタビューを読みながら考えた次第です。

 同紙のインタビューで又吉氏は「中学生のころは、ある日突然スーパーパワーが自分に宿って、世界の悪とたたかえるんじゃないかとギリギリまで考えていた。そんな日は訪れなかったですけど」と己の思春期を振り返っています。それって藤子・F・不二雄の異色短編「ウルトラスーパーデラックスマン」じゃねえのとw

 そう笑わせた後、又吉氏は実に含蓄ある言葉でインタビューを締めるのでした。

「ねたみそねみは、若いころは一瞬あったと思うんですけれど、(いまは)そういう表情を見ないようにしています。初めっから負けるって決めてた方が楽やな、と」

 非常に示唆に富んだ言葉ではないでしょうか。特に社会的な運動をしている人々にとっては。スポーツだと勝った負けたに血眼になるのはある意味当然なのですが、いわゆる社会を変えていく運動を勝ち負けで考えると、強大な国家権力を持った相手とのたたかいをすれば負け続けるのはある意味当然なわけです。

 もっとも又吉氏は安倍政権が成立に執念を燃やす共謀罪法案や憲法改定の実現を念頭に置いて話したわけではないでしょうが、彼の言葉は多くの市民を励ますものとなるでしょう。私も又吉氏のエール(?)に応えるものとして、早速「劇場」の単行本を手に入れようと思っています。ってまだ読んでないんかーい!←ベタ