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キングオブコント2016決勝戦感想その9今大会の観客について

  さてライス優勝で幕を閉じた今大会から3週間以上たってしまったわけだが、この問題にも触れておきたい。今大会、多くのお笑いファンの怒りを買うことになった「観客の反応」の問題である。

 要は、ネタを見ていてやたら騒がしい観客がことのほか多かった、ということらしく、ネット上で批判の声が相次いだ。著名な演芸評論ブログ「土曜深夜の視聴覚室」の菅家しのぶ氏は特に手厳しく「お前らは映画館でも誰かが怪我したら『ウワァー』って声をあげるのか」「しずるのコントで血を見て引いていたのは本当に意味が分からん」「こっちの視聴を阻害するような反応はやめてくれ」と辛辣な批判を大会の観客に向けて行っていた。私が読んでいた2chのお笑い芸人板の「キングオブコント」スレでも、同様の書き込みが非常に多く見られた。

 別にこちらとしては、そうした批判に真っ向から反論しようというわけではない。ただ批判の声を上げた彼らの多くと同じく、テレビでリアルタイムで決勝戦を視聴していた私の率直な感想としては、そんなに観客の悲鳴は気にならなかった。全く耳に入らないわけではなかったが、しずるの突入コント中に起きた悲鳴への菅家氏の指摘も「そういうのあったね」と思い出すくらいだった。

 むしろ私は「今大会の観客はドカンドカンとよく笑うな」という感想を持った。前回は審査システム改変(芸人100人審査から著名な5人の芸人による審査)により初めて多数の一般客をスタジオに入れ、その観客も妙に笑いが少なく重たい印象が残った。

 「よく笑うなあ」という意味で驚かされたのは、ファイナルステージのライスのネタのときである。前の記事でも書いたが、関町のズボンがビチャビチャの理由を彼の口から明かされたとき、ドオン!と会場から笑い声が起きた。過去の芸人審査時代のキングオブコントをひも解いても、あれだけ笑いの起きたシーンは数えるほどしかないのではないか。あれで最終的に、ライスの優勝が決定づけられたと言ってもよい。そういう意味では、むしろお笑いのアンテナをきっちりと立てていた観客が多かったと好意的な印象を抱いていたくらいである。

 観客の悲鳴の是非については、私は「アリ」だと思っている。最悪、口汚いヤジを飛ばすような客がいなければそれでいいんじゃね、くらいな感じで。それに悲鳴を上げるような観客は、笑いのポイントでもきっちり笑うことが多いんじゃないかね。テレビカメラは観客をずっと映さないから、こちらも確信があるわけじゃないけど。

 「賞レースの決勝という年に1回の大舞台なのだから、観客も緊張感を持って見るべきだ」という意見も多く見られた。菅家氏も「スタジオを自宅の茶の間か何かと勘違いしていたのか」と書いていた。それに関しては「緊張感持ってネタ見ていたら笑えねえだろ」と指摘するしかない。

 またお笑いの大会にとどまらず、この手の大舞台では「観客は生もの」であり、ああしろこうしろと指図する方が無粋だと思わなくもない。この夏の高校野球の選手権大会、八戸学院光星(青森)×東邦(愛知)。この試合では最終回で東邦が猛反撃を見せる中、異様に盛り上がる観客の姿が物議を醸した。

 100年近い歴史を持つ高校野球の全国大会でもこうなのだ。だから月並みな結論にはなるが、観客の反応がどうであっても、そうした観客を味方につけるようなネタをやり切ることこそが芸人にとって求められることであり、それを達成してこそ賞レースの頂点に立つことができるのでは…と思う。

 今回の記事について、忌憚ない感想や意見をいただけると幸いです。